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魔術師A
夏喜は左手をジーッと見ている。
夏喜に襲いかかったあの不思議な力が吸収できなかった左手を、グーパーと動かしながら。

「ヤツの魔術は空間を引き裂く魔術でなぁ……っつか聞いてんのかぁ?」

「ん?あぁ、すまない……でも吸収できなかったぞ?炎とか」


「でも殺ったんだろぉ?」

ん?と夏喜は先ほどの光景を思い浮かべる。
確かに炎や、その他の力は左手は全く役に立たなかった。
ただ、吹き出す直前を除いては。

「あ、あぁ……確かに。
殺してはないけど」

アレはどういうことなんだ?
と夏喜が問う前に高宮は話し始めた。

「ヤツの空間を引き裂く魔術はな、繋げちまうんだよ」

「繋げる?」

「ヒッヒ、そのままの意味さね。炎を使うなら炎がある場所になぁ」

夏喜は眉をひそめながら高宮の話を聞いている。
なんとか理解はできているのか、それとも全く理解できていないのか。
そんな感じの表情で高宮の話を聞いていた。

「フン、つまりだなぁ、吹き出しているもんは異能の力でもなんでもねぇ。実在するもんなんだ」

高宮は続ける。

「ケラッ、もう一度言うぜ?ヤツの魔術は空間を切り裂いて場所を繋げる。雷なら雷のある場所、風なら竜巻の起こっている場所になぁ」

高宮を腕を組んで、少し面倒臭そうに話をし続ける。
常識知らずの人間に、常識事を話すような感じだった。

「だけど吹き出す直前に少しだけ、隙ができんだよ。空間が光を放ってな」

なるほど、と夏喜は高宮の言葉を遮って納得した。
後は、当事者の夏喜は身をもって体験している。
その光の部分は夏喜の左手
で吸収できる。つまり、魔術は夏喜の左手で吸収できるという事だ。

「ふぅん……立てるか?高宮?」

夏喜は壁に手を置いて、それを支えに立ち上がる。
そして、パンパン、と軽くズボンに付いた土埃を払い落とした。

「おぃ、もういいのか?」

「あぁ、よくわかんないけど、理解したと思う」

高宮は既に回復したようで、夏喜に続いて立ち上がった。

「……そうか、一般人を巻き込んぢまった、魔術師側としてはもう少ししっかり説明しておきたかったんだが」

高宮が立った事を確認した夏喜は路地裏から出ようと高宮に背を向けて夏喜は一歩踏み出していた。
しかし、夏喜の次の一歩が出ない。

『魔術師』、『魔術』というオカルト的な言葉はこの短い時間で聞き慣れてしまう程まで複数使われていた。
そのため、違和感はない。ハズだがどうも夏喜は高宮の言葉に違和感を覚え、足を止めた。

(魔術師側……『として』は――?)

夏喜はバッと音が聞こえそうな勢いで振り返った。
そして、信じられないようなものを見るような目をむけると、回転変換(ターンスピン)の大能力者(レベル4)はニヤリと笑って、

「ニャハッ、そういう事。俺も魔術師の一員って事だぜぇ」

あまりにも、あっさりと高宮隆治は告げた。
自分は『魔術師』である。と。
だからこそ、夏喜は高宮が何を言ったのか、理解するまで普通の思考より三倍ほど理解するのに時間がかかった。

「ちょっと待てよ……お前も……魔術師?」

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