パトリスvs夏喜A
その時一瞬前まで夏、喜が居た場所から、赤い液体が流れ出した。
それは、白い水蒸気を吹き出し、定期的に沸騰した湯の様にボコンボコンという音を立てながら活動している。
「なんだ……溶岩みたいな…あぶね、ちょっと遅れたら溶けてたな……」
「チィッ!」
パトリスは小さく舌打ちして、次の動作に移ろうと義手の剣を地面と平行に構えた。
そして、振り下ろそうとする。
「させねぇ!!」
夏喜はパトリスがそれを振り切る前に、パトリスへと接近する。
「ふんっ、ムダな事を……」
が、一瞬同様するような目を見せたが、それだけで特に気にするような事はせず勢い良く、地面と平行に振りきった。
「うおおぉ!!」
だが、夏喜もそれに構わず左の拳をパトリスへと突き出す。
バチンッ
何かが弾けるような音が夏喜の耳に届いた。
パトリスも驚いているのかもしれないが、その場で最も驚いているのは夏喜だった。
「何が……?」
まさか新しい攻撃が襲ったのか、と思ったが体にそのような衝撃はない。
その変わり、左手に何かが吸い付くような、しかし夏喜にしかわからないような感覚を感じている。
左手を見ると灰色の破片のようなものが左手に集まっている。
(そうかそうか……未だに吸収できない理由がわからないけど、結局は異能の力によるモンなんだな……)
夏喜は飛ぶようにパトリスと距離をとり、左手をグーパーと動かしながら確認する。
(と、いう事は吹き出す前に叩いてしまえばいいんだ――)
「貴様ぁ?何をしたぁ?!」
苛立つ心境を露にしながらパトリスは頭上に刀をかざす。
(とにかく……振り下ろした時が勝負だ!)
ダンッ
再び夏喜はパトリスとの距離を縮める。
「そのままでは君が斬れてしまうよ?!」
パトリスは裂けるような笑みを浮かべ、勢いよく剣を振りきった。
(そうくると思ってたんだよなぁ!)
だが、夏喜はその剣の射程から外れた距離、しかし触れるか触れないかというギリギリの距離で立ち止まった。
「……ぇ」
パトリスは不意を突かれたような表情を浮かべた。
(どこだ……)
夏喜は五感を研ぎ澄ませて何かを探す。
これは全てが一瞬で行われている。
(上だ!)
そして、標的を見つけた瞬間、左の拳を頭上へと突き出した。
そこは先ほどと同じような音を立てて、何事もなかったように砕け、その破片が夏喜の左手に集まる。
(何が何だかわからないけどよ、何かを守ろうとしてるヤツを殺ろうとするヤツを俺は許せない性分でな!)
夏喜は左手を軽く握り、右拳をさらに強く握り締める。
そしてグイッと腰を生かし、振り降ろした刀が床に突き刺さり抜けなずに戸惑っている、隙だらけのパトリスの顎へ向かって、右の拳を突き出す。
(なんだが、あの子は危険に晒しちゃいけなぃ気がするしなぁ!)
ガコッ
と顎の骨に拳がめり込む鈍い音が短く響き、次いで左拳をパトリスのみぞおちに叩き込む。
「とっととココから立ち去れぇ!」
そして、再び強く右手を握りしめ、そこに夏喜の炎が集まってゆく。
夏喜にしては珍しい楽しむような、裂けた笑みを浮かべていた。
「さよおならぁ!!!」
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