Merging Melodies
6
『ぼク?ぼクはイッキュ。ヒヤップのイッキュというのだ。特技は後ろ走りなのだ。』
『後ろ走りって、バック走?それに…イッキュウ…?』
自分の胸辺りに右手を当てながら、ご丁寧に特技まで交え、簡単な自己紹介を淡々と終えたポケモン―ヒヤップのイッキュの返答に、フォアイトは某アメフト漫画の天才コーナーバックを何となく思い出し、目の前の小猿と見比べて変な気分になった。
彼の奇妙な視線を感じてか、別段そういうわけでもないのか、イッキュは『あ、違うのだ。イッキュ「ウ」じゃぁなくて、イッキュなのだ。「ウ」を付けたら、なんかトンチのうまい坊主頭の人みたいになっちゃうのだ。それはいやなのだ。』、とやけにいちいち文章を区切りながらフォアイトの間違いを指摘する。
のほほんとした表情のまま、一定のペースで話す姿には、どこか癒されるものがあるが、目の前でそれを見ているフォアイトはというと、とんだイッキュウ違いだ、知名度の高いほうの一休さんを想像したんだなと妙に納得しただけであとはしばし、ぼんやりと眼前の小さな画用紙に一本線をボールペンで弧を描くように横に引かれただけのような糸目を、これでちゃんと見えてんのかな〜とか思いながら見つめていた。
『それより、その緑ちゃんは平気なのだ?見たところ瀕死状態なのだ…。』
お互いぼけ〜としたまま暫くが過ぎ、葉っぱの擦れあう音すら耳の中に残らないほどになった頃、二本線の下で角のない『W』を形作っていた猫口が突然そんなことを口走りながらフォアイトの腕に抱かれている若草色を指差した。
見ると未だに意識の戻らないツンちゃんが、目をぐるりぐるりと回しながらきゅ〜という声をあげていた。
彼女にとっては、たかだかちび猿のバック走もそれはそれは恐ろしい化け物に見えたようで、本人の口から直接聞かなくても、ピクピク痙攣までして目を回している彼女の有様から、容易にそれを汲み取ることが出来た。
彼女の口から溢れていた泡の一部がフォアイトの袖に付着し、汚らしいあぶくの山を作り上げている。
そんな惨状を目撃したフォアイトは、2、3回、意識のないツンちゃんと相変わらずドヤ顔のままの猿を見比べた後、何か思い付いたように一度目を反らしてから、白々しい口調で語りはじめた。
『あ、そう、これはな、さっきな、いきなりな、後ろ走りでこっちに突っ込んできたアホがいてな、この子にはなそいつがお化けに見えたらしくてな、それでな、ビックリしてな、気を失っちゃったって感じなのだ。…じゃなくて感じなんだよな。』
『あや〜…、それはお気の毒なのだ…。』
『だろ〜?俺手持ちこのツンちゃんだけだからさ〜、ちょっとばっかし困っちゃったかな〜みたいな。』
『いやや〜。それは困ったのだ。一体誰なのだ?その周りも憚らずに後ろ向きで走り回ってるのは〜。許せないのだ!』
『……………。』
『……………。』
『………………。』
『………………。』
『………………………。』
『………って、それはもしかしてぼクのことなのだ!?』
『はいそうでーす。アホ猿君正解。』
ここに来てやっと僅かながら表情に無ではない色が継ぎ足されたイッキュは、フォアイトのわざとらしい発言の真意に行き着いたのか、やけに大袈裟なリアクションをとってみせる。
そんな様子を横目に見てフォアイトは立ち上がりながら、皮肉っぽく彼に正解だと告げた。
ついさっき語尾にイッキュの口癖が伝染ってしまったことは別段気にするつもりはないようだ。
目線が上がった拍子に、高い位置に上り詰めたお日様から、温かいを大きく通り越した光が顔に降り立ってそこに明暗を作り出した。
どうやらもうお昼時らしく、さっきまで横から森に入り込もうとして木々に打ち止められていた陽光が、樹木の妨害を無視して真上から林中を照らし出しはじめたおかげで、さっきまでのじめじめが幾分か引いていき、代わりにむわついた暑さが体に纏わり付いて、自然の湿り気とはまた別の湿っぽさが、衣服の内部に現れ始めていた。
『あややや…。それはごめんなさいなのだ。でもわざとじゃ無いのだ。』
情景描写に気を取られていたフォアイトが、ペコペコ頭を下げたり上げたり、両手を顔の前でブンブンしたりしながら自分に謝罪の意を表しているイッキュに気がついたのは、彼の顔に不時着した太陽光が、本体が一旦雲の影に隠れたせいでその場から立ち去った頃だった。
彼の表情は相変わらず変わった風には見えないが、今までフォアイトの周りを犇めくように取り囲んでいた様々な変人と比べると、根はずっとまともなようなので、別に最初から叱り付ける気もないし、素直に謝っているポケモンにこれ以上意地悪する気も起きなくなったフォアイトは、『あぁまぁいいよ別に、こっちもこっちで思い込みの激しいところはあったし』と適当に返答しながらツンちゃんの頬っぺたを軽く叩いたり抓ったりして起こそうと試みていた。
生暖かくなってきた風が、う〜んう〜んとうなされ始めたツンちゃんのしっぽの葉っぱをぬるぬると動かす。
勿論、彼女と同じように南風をその身に受けたフォアイトは、いつの間にか眉間を伝って顎から垂れるほどの汗をかいていたのに気が付いて上着のファスナーを降ろした。
『んー、起きないっぽいな。暑くなってきたし、一度戻…。ん…?』
と、フォアイトが脱いだ服を適当に畳み込みながら、一行に起きないツンちゃんを諦めて森の出口のほうへ身体を向けようとしたときだった。
闇雲にそそり立つ木々の合間から、ここへ来たときに比べると幾分か熱を帯びたように感じる風に乗って、どこからともなく『イッキュちゃ〜ん』と呼ぶ声が両耳を掠めて行ったのだ。
『ぁあっ!いけないのだ!鬼が来たのだ!』
『何?鬼?』
『そうなのだ!ぼクは鬼から逃げている途中だったのだっ!』
その呼び声がここまで届くなり、これまでになく表情を強張らせながら額に汗を浮かばせて『鬼だ!』と焦りはじめるイッキュのただならぬ様子に、フォアイトは一瞬脳裏に浮かんだ鬼ごっこ真っ最中のちび二匹を頭の隅に追いやる。
ただの鬼ごっこだとしてはこの騒ぎよう、大したことでは取り乱したりしなさそうな彼がこの様子なのだから恐らく、鬼と称した別の何かから逃げていたに違いないとフォアイトは思った。
そんなことを考えているうちにも、声の主は徐々にこちらに近づいてきているようで、風に乗って僅かにこちらに届いていただけだった呼び声は、しっかりと鼓膜の奥まで刺激するようになってくる。
そのことをフォアイトが気に留めるよりも先に、イッキュは、とにかく匿ってほしいのだ、捕まったらオシマイなのだといって近場にあったくさむらに無理矢理潜り込んで行ってしまった。
『イッキュちゃ〜ん。どこにいるの〜?』
もうすぐそばまで来ているようだが、鬱蒼と繁った木々、もしくは崩れかけた廃屋を挟んだ向こう側にいるようなので、その姿は未だに確認できない。
しかし、声の調子や高さからして、今近くのくさむらの中で縮こまっているイッキュが鬼と読んでいるのは、どうやら女性のようであることは理解できた。
『き、来ちゃうのだ〜…!鬼のようにまずい飯を無理矢理食わせる魔性の鬼女が〜…。』
プルプル震えているのが外からでもわかるほどにくさむらを揺らしながら、イッキュは聞いてもいないのにわざわざ追ってくる鬼の特徴を述べあげる。
ていうかそんなにくさむらガサガサしてたら、隠れている意味がないんじゃ、ていうか追ってくる人が鬼って呼ばれている理由がなんかベタ過ぎるような、ていうかこいつ野生のポケモンじゃなかったのかよ、じゃやっぱトレーナーから逃げ出したのか、心配して探しに来たんだなと、お決まりになりつつあるフォアイトのぐるぐる一人問答が終わるか終わらないかのうちに、イッキュの隠れたくさむらの反対側の木々から、がさという葉音とともに、イッキュにとっての鬼が姿を現した。
『ふ〜…。イッキュちゃ〜ん!一体どこに…、あら?』
みたところ普通の女性であるが、どうやらかなり長い間森の草木のお世話になったようで、ピンク色のワンピースや藍色のショートヘアーの所々に緑や黄緑色をくっつけていた。
彼女は現れるなりため息混じりにその場で大声をあげたのも一瞬、目の前のフォアイトに気がついたようで、ぱぱっとこちらまで近づいたかと思うと、すみません、そこの人!と声をかけ、偉い早口のまま身振り手振りをつけて話しはじめた。
『あ、あの、一つお尋ねしたいんですけど、こっちのほうにこのくらいの大きさの、青いお猿のような…、ヒヤップというポケモンを見ませんでしt』
『あ、もしかしてこれのこと?』
『ぎょえぇぇぇぇえ〜〜〜!?お、鬼!』
彼女が近付いてきて話しはじめるよりも前に、イッキュの隠れ込んだくさむらに手を突っ込んだフォアイトは、彼女が話し終える前に彼の胴体をわしづかみにして引きずり出した。
『あ!その子です!あぁ…。イッキュちゃん…よかった…!』
『よかったよかった。』
『よ、よくないのだ!帽子君もグルだったのだ!?酷いのだ!鬼なのだ!騙されたのだーっ!』
「鬼」はイッキュの姿を見るなり引ったくるようにしてフォアイトの右腕からむしり取ると、ぎゅうと暴れる彼を抱きしめた。
そんな様子を見ながらかけらもそう思っていないよかったを連呼するフォアイトに向かって、イッキュは鬼〜鬼〜と怒鳴り付ける。
終始アーチ状だった糸目が、この時ばかりは斜めに釣り上がっていた。
『本当にありがとうございます!なんとお礼を言っていいのか…あ!あの、この子、何かご迷惑をおかけしなかったでしょうか…?』
『おかけされました。』
目の前でペコペコと頭を上げ下げしながらお礼を申し上げている女性を眺めながら、ぼんやり、あれなんかデジャヴと思いながらも、フォアイトはそのあとにされた質問に対して、依然、自分の腕の中で伸びているツンちゃんを指差しながら、正直になっちゃいけないようなところまで正直に答えた。
『は、はわわ…!すみません!何かお詫びを…あら…?』
思ってもみない遠慮ない返答に、当然ながらオロオロしはじめた彼女だったが、フォアイトの左の小脇に抱えられているツンちゃんを見つけると、覗き込むようにしてずいと顔を近づけてきた。
『ツタージャ…ってことは、あなたもしかして、アララギ博士のところから旅に出た子だったりします?』
『お?うんまぁそうだけど…。』
『そうだったの!じゃあこのヒヤップのイッキュちゃんと、相性はピッタリね!』
『は?』
『なのだ?』
彼女が突然あせあせ顔からぱっと笑ってそんな何の脈絡もないことを言ったので、フォアイトはおろか女性の腕の中に収まるまいとじたばたしていたイッキュも呆気に取られたような声をあげる。
『あ、そうそう、自己紹介まだでしたね。私はヒトミ!昔、大学でアララギ先輩にお世話になった身なの。』
『ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待て。ってことはあのアララギ……………博士(ぼそっ)…が、あなたのお世話をしたってこと?』
『?そうですけど…?』
『ぇぇえ〜〜……。』
世の中、いくら信憑性がない話しであっても、考え方一つである程度はまぁ『有り得なくもない』話しに見えて来ないでもないだろうと、自分でも柔軟な頭を持っているとそれなりに自負していたフォアイトだったから、彼にとってここまで信じられない話しを聞いたは初めてで柄にもなく本気の本気でぇぇえ〜と言ったまま固まってしまった。
何しろ……何しろ『あの』アララギが、彼にとっては珍獣かなにかとなんら変わりない存在のアララギ博士が他人の世話など出来たようなものなのだろうか?
いや、それ以前にこの人―ヒトミさんは、アララギの大学の後輩というくらいだから二十歳なんてとっくに過ぎているはずだ、やばいため口利いちゃったなぁ、てか、童顔だぁこの人、なんて例の如く考えが別のほうへ別のほうへ逸れていく中、『私、今でも、いいえ、今だからこそアララギ博士のこと、本当に尊敬しているんですよ。』と目の前で彼女が話したので、フォアイトは何の他意もなく、ただ純粋に世の中には本当にかわいそうな人もいたもんだなぁと感じ、今まで誰にも向けたことのないような哀れみの目線で彼女を見つめてしまっていた。
『あ…あの…私の顔に、何かついてますか…?』
『いや、何も。きっといいことあるから…。』
『は、はぁ…。?』
『それよりも、その、アララギっ……博士…、がどうのこうのってのは、そのヒヤップとツンちゃん…ツタージャの相性云々の話しに、なんか関係あるの?』
『あぁ…それは…。』
こっからは台詞にすると長いので早い話しが、ヒトミは大学にいた頃、ポケモンのタイプについての研究を専門としており、得に初心者用の最初のポケモン達の持つタイプ、くさ、ほのお、みずの3タイプにスポットを当てていたそうだ。
あるとき、フォアイトや彼の幼なじみと同じく、初心者用のポケモンを手に旅立ったトレーナーから、ポケモン達の相性を補完するのに手を焼いている、何とかする方法はないのかという相談が、彼がポケモンを手にした研究所経由で、大学側に入ったらしい。
調度その頃に大学の研究チームにいたヒトミは、この問題を大学側からの課題として取り組み、実験やシュミレーションで試行錯誤を繰り返してきたという。
そうして行き着いたのが、ヤナップ、バオップ、そして、ヒヤップというポケモンを初心者用のポケモンと一緒に新人トレーナーに配る、というものだった。
彼ら『三猿』は、バランスの取れた能力値で初心者でも扱いやすく、その上タイプも初心者向けの三体と一致、その弱点を補うように組み合わせることで、議題とされていた相性の問題も解消、これでこの課題もクリア、という寸法だったらしい。
しかし、レベルではなく石でしか進化しない点や、野生の棲息数の少なさ、提供する側の研究所の負担などを考えると、実用に至るまでには幾つかの弊害があると指摘され、結局採用されないままこの案はお蔵入りとなってしまったのだ。
が、大学卒業後に第一線を退いてもなお独自に研究を続けていた彼女は、出来るだけ費用をかけないで三猿を育てる方法を発見、(恐らくそのせいでイッキュは飯がまずいとかなんとか言っている模様)メタモンを使っての繁殖などを利用して野生棲息数の問題も解消し、今では個人的な意志でアララギの元から旅立ったトレーナーに、これらのポケモンを授けているのだという。
『…というわけなので、はい。このイッキュちゃんを可愛がってあげてください!』
『ぉ…おろ…?え?タダで?いいの?』
『はい。私の好きでやってることですから!』
話し終えるや否や、ヒトミは今まで散々探し回っていたはずのイッキュを躊躇うことなくフォアイトに手渡す。
さすがのフォアイトも、人の育てたポケモンを本人に何の見返りもなく頂くのには少し抵抗があるようで、押し付けられたイッキュと彼女の顔を交互に見比べたりしてみたが、ニッコリ笑顔で好きでやってると言われれば、断るわけにも行かない。
終いには、まぁ、本当は少し寂しかったりするんですけど、でもトレーナーさんがこれからもっと楽しく旅が出来るなら…なんて俯き加減で呟く始末なので、フォアイトはますますこの人がアララギなんかの後輩だということを疑わしく思えてしまった。
『あ…もうお昼時だわ…。それでは、子供達がそろそろお腹をすかせていると思うので、私はこれで…。』
(子持ち…ってことは、もう結婚してんのか。アララギざまぁ。)
時々顔を見せてくれたらうれしいです、なんて手を振りながら去っていくヒトミの言葉は半分しか耳に入れず、後輩に先を越されているアララギに低脳な悪口を内心で呟くフォアイト。
彼女が完全に見えなくなる前に右腕にすっぽりはまっている青猿に視線を落とす。
『で、お前はこれでよかったのか?』
『よかったも何も、これであんな鬼まずい飯とおさらばできるのだ!ぼクは救われたのだ!ばんざーいばんざーい!』
いくら何でもそれはないだろう、まがりなりにも今まで自分を育ててくれていた人との別れだというのに、両手を真上に挙げ放題、騒ぎ放題、元々細かった糸目を更に細くして全身で喜びを表現するイッキュが、とってもとってもやな子に見えてきたフォアイトは、一瞬ヒトミの元へ送り返そうかと考えたが、もう彼女の姿も見えないし、よくよく考えたら、これから先、みずタイプのポケモンを手に入れれそうな場所がすぐに頭に浮かばなかったので、まぁよしとするか、本人もこんな喜んでいるんだしと、珍しく綺麗に考えごとを片付けた。
『う、うみゅう〜…。』
『あ、ツンちゃん…。』
と、騒ぎ立てるイッキュの歓喜の声に、さっきまで起こしても中々目を覚まさなかったツンちゃんがようやく起きる兆しを見せはじめる。
その様子に気が付いたフォアイトが、取り合えずイッキュに下に降りるよう指示するより前に、彼女はやっとこさ目を覚ましようだった。
『ふゃ〜…?ここは?………ぅぴゃ!?』
『やぁツンちゃん。いい夢は見れたか?』
所謂お姫様抱っこというやつだ、(といっても大きさの関係であまりそうは見えないが…)両の腕の上に寝かされていたツンちゃんは、いきなり視界の八割を陣取ったフォアイトの顔にビクッと体を一瞬強張らせるも、彼の放った一言ですっと力を抜く。
『う、う〜…フォアイト…。怖い夢だったような…そうでなかったy…』
グシグシと目を腕で擦りながら、キョロキョロ辺りを見回すツンちゃんの目線が、地べたに座り込んでいるイッキュに向いたところで止まった。
と思ったのもつかの間、こんにちはと片手を挙げる彼をよそに、ひっという声をあげたのかあげてないかわからないくらい驚愕した表情を浮かべたかと思うと、先程の大騒ぎを優に越える爆音が辺りにこだました。
『ぎぴゃぁぁぁぁぁあ〜〜〜〜〜っ!!!のっ!のっぺら坊に!のっぺら坊に顔があるぅ〜〜〜〜っ!!』
『いやいや、一旦落ち着くのだ。ぼクはヒヤップの…』
『わああああああっ!く、来るなぁ!フォアイトとあたしに近付くなぁぁぁ!!!』
『え、ちょ、ツンちゃん!止まれ!そいつは敵じゃ……。』
その次の瞬間、彼の目の前にはボロボロになった青い猿が、沢山の蔦に吊るし上げられて叩かれ続けるという、血生臭い造形が出来上がっていた。
彼らを廃屋の壁二枚隔てた向こう側では、ちび達二匹が、それはそれは楽しそうにくさむらの中を転げ回っていた。
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