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ポケモン
【ポケモンBW】草むらの小さな騎士・1【エモンガ&タブンネ】



 空中でひらりと身をひるがえすと、エモンガはドテッコツ目掛けて飛びかかった。
 飛行タイプの技、アクロバットだ。

「ドコォォォ〜〜っ!!」

 格闘タイプのポケモンは、飛行タイプの技に弱い。さらにこのエモンガは勢いに乗っている。小さなポケモンの一撃に悲鳴を上げたドテッコツは、地面に倒れ込んだ。

「ドテッコツ!?」

 ドテッコツのトレーナーである少年が叫ぶ。しかし彼がもう立ち上がれない事を悟ると、悔しげに顔をゆがめて、傷ついたドテッコツをモンスターボールに戻した。

「後は……っ、オタマロ、ホイーガ、ヒヤッキー、モンメン……か……」

 どれも、電気・飛行の2タイプを持つエモンガに不利なポケモンばかりだ。他にシママもいたが、まだレベルが低かった事もあり、既にエモンガに敗れている。ならば力でねじ伏せようと、手持ちの中で一番育っているドテッコツを出したが、多少のダメージは与えられたもの、素早く繰り出されるエモンガの攻撃に歯が立たなかった。
 レベル上げに重点を起き、バランスの取れていない編成にした事が、あだとなってしまった様だ。
 いら立ちから、少年は舌打ちをした。
タブンネを狩って手っ取り早く経験値を稼ごうと、この森にやって来たのが、少し前の事。到着してすぐに揺れる草むらを見つけて、意気揚々と草むらをのぞき込んだのが、そこにいたのはタブンネではなく、あの憎たらしいエモンガだった。
 そして、このザマだ。

「あ〜っ、サイテーだぁっ!」

 大声で叫ぶと、少年はその場を走り去った。



◆◇◆◇◆



 逃げ去る人間の背中に、小さなエモンガはアッカンベエをした。

「ふんだっ、もう二度と来るな〜!」

 欲の皮が張った人間の相手は、本当に疲れる。
 しかしこれで、あの子が痛い思いをしないのだ。良しとしよう。
 近くの茂みに向かって、エモンガは笑いかけた。

「もう出てきていいよ〜」

 茂みが揺れ、1匹のポケモンが出てきた。
 タブンネだ。沈んだ表情で、エモンガを見ている。
 エモンガは、タブンネに笑いかけた。

「もう大丈夫だよ、タブンネ」
「ごめんね、エモちゃん。すごいケガ…」

 腰をかがめると、タブンネはエモンガの右腕に手を伸ばす。
 彼の小さな腕は、広範囲に渡って赤くはれ上がっていた。先程の戦いでついたものだ。
 あわてて傷口を手でおおうと、エモンガは友達を安心させるために、明るく笑ってみせた。

「アハハ、これくらい平気だって。ボクはキミよりも強いんだからね」

 本当は痛い。熱くてヒリヒリする。
 しかし痛いと言ってしまえば、タブンネがメソメソと泣きながら謝り続けてしまうかもしれない。この泣き虫で心配性な友達は、すでに半ベソをかいていた。
 だから、無理にでも笑わなくてはいけなかった。

「エモちゃん……」
「それより、お腹空いたな〜。ねえ、さっき集めた木の実、食べてもいいよね?」
「あ、うん。ちょっと待ってね」

 タブンネはエモンガに背を向けて、自分が隠れていた茂みをガサガサとあさる。少しして振り返ると、腕にたくさんのオレンの実を抱えていた。先ほど人間を見つけるまで、2匹で集めていたものだ。
 タブンネは木の実を1個、エモンガに手渡した。

「はい、エモちゃん」
「ありがとう。いっただきま〜す!」

 さっそく大きく口を開けて、受け取った木の実にかぶりつく。サラリとした甘い果汁をすすると、痛みがやわらいでいった。
 おいしいし、食べると元気になる。オレンの実はステキな木の実だと、エモンガは改めて思った。

「ん〜、おいしい。一汗かいた後のオレンの実は最高だね!」

 エモンガが元気良く笑いながら言うと、タブンネは少し笑った。
 腕の中の木の実をエモンガの前に下ろすと、タブンネは再び立ち上がった。そして、

「ちょっと待ってて」

 と言うと、近くの茂みに分け入って、どこかに行ってしまった。
 木の実を食べながら待っていると、タブンネは木の葉を何枚か持って戻ってきた。
 近くの川辺に生える低木の葉だ。人間の手の平くらいの大きさのそれは、柔らかくコシがあるので、ハハコモリがクルミルのおくるみの材料によく使っている。その葉を川の水で濡らしてきたのだろうか、木の葉もタブンネの手も、ビショヒショに濡れていた。

「腕を出して、ケガしてる方の腕を」

 反対の手に持った木の実を食べながら、言われるままにケガをした腕を出すと、タブンネは患部に被せるように葉を貼り付けた。
 水で濡れた葉はひんやりとして、はれあがった腕の熱がスゥと引いていった。
 その心地良さに、エモンガは目を細めた。

「気持ちいい〜。ありがとう、タブンネ♪」
「ごめんね、まだ『いやしのはどう』を覚えてないから、これ位しかできなくて……」
「いいよ、これで十分だから。ねえ、キミも食べようよ」

 と言うと、目の前のオレンの実をつかんで、タブンネに差し出した。

「う、うん」

 エモンガから木の実を受け取ると、タブンネは腰を下ろす。そして小さく口を開けて木の実をかじった。

「おいしいね、タブンネ♪」
「う、うん」

 ぎこちなくタブンネは微笑む。
 木の実をかじりながら、エモンガはそれを見つめた。

(どうして、そんな風に笑うの?)

 自分は、嫌なトレーナーを追っ払ったのだ。
 もっと喜んでほしいのに、どうしてそんな辛そうに笑うのだろう。

(ケガをしたから?)

 ケガをした腕を、チラリと見た。
 力自慢のドテッコツ。その前に戦ったのは、自慢のエレキボールが通用しないシママ。
 正直、楽な戦いではなかった。気持ちをふるい立たせて押し切ったが、あの後さらに何匹も戦っていたら、ひん死状態まで追い込まれていたかもしれない。

(もっと強くなったら、ケガしないくらい強くなったら、キミは喜んでくれるかな?)

「強くなろう……」
「え? 何か言った、エモちゃん?」

 エモンガの小さなつぶやきは、幸運にも友達の耳には届いてなかったようだ。
 不思議そうな顔で首をかしげるタブンネに、エモンガは笑いかける。

「ううん、何でもないよ。そうだ、食べたら原っぱに行こうよ」
「うん、そうだね」

 タブンネは笑顔でうなずいた。

「天気もいいし、向こうに行ったら鬼ごっこしようよ」
「え〜と……、日向ぼっこしない?」
「それもいいね、そうしよっか。ポカポカして、きっと気持ちいいだろうね〜♪」
「うんっ、そうだね」

 タブンネは嬉しそうに笑う。
 自分も嬉しくなって、エモンガはニッコリと笑った。


2に続く


【あとがき】

初のポケモン小説です。もしかすると続くかもしれません。
(とりあえず続きは書いているのですけど、今一つまとまらなくて)

エモンガが好きですv
メインのブラック・サブのホワイト共に、殿堂入りメンバーでもあります。現在のLVは78です。
対戦では微妙かもしれないけど、頑張れる子だと思います。
タブンネが好きです♪
あの桃色ボディと、ぽっちゃりとした体型が可愛いです♪
揺れる草むらからタブンネじゃなくてエモンガが出てくると、タブンネをかばってエモンガが飛び出してきた様に思えてなりません(*^_^*)

(2011.06.11)




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