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知らないフリはしないで、(ツナ)


夕方。並盛高校の屋上に二人の人物がいるのが見えた。

見知った二人。
銀髪の男子生徒に黒髪の女生徒。
隼人と私の親友である『彼女』だ…。

高校に上がってからツナの周りには裏の人間が増えた。
所謂、護衛だとか。

それは隼人も同じでその中にいたのが…
今の『彼女』だとノロケで聞かされた。

視力が両目とも『2.0』という数字を誇る自分が今は恨めしい。

楽しげに話している様子も何もかもが丸分かりだ。
ずっと見つめていると心臓を刃物が抉るように痛みだす。

「なんで、こんな思いしなくちゃならないの…っ」

涙を流したくなくて空を仰ぐ。
空は真っ赤に染まっていて夕焼けが目に染みる。
じわじわと視界がぼやけていく。

「…名前!?えっと、だ、大丈夫!?」

すぐそこに駆け寄ってくるツナに泣きたくて縋り付きたくなるが我慢する。
甘えちゃいけない。

「……え?どうもしないよ、ツナ。帰ったんじゃなかったんだ?」

「よかった…。あ、また居残りさせられちゃってさ…。」

「へぇ。あ、いつもの忠犬と天然くんは?」

「ちょ、名前くらいだよ?二人をそう呼ぶの…。」

「じゃあ、…隼人と武くん?」

「なんで獄寺くんは呼び捨て!?……でも、それはそれで嫌だな。」

なにやら悶々と考えてブツブツ呟いているツナが怖い。

「で、さっき何見てたの?」

いつもヘラリと笑っている目じゃない真剣な目が自分を射抜いて緊張が走る。

裏社会の勉強をしているみたいでこういう目をするツナが最近増えてきた。
嫌だな。
ツナはツナでしかないはずなのにツナじゃなくなるみたい。

「女には優しくしろって言われてるからね。」

「そっか。また、リボーンくん?」

一瞬の沈黙が走る。

「ねぇ、名前。一緒にイタリアに来る気ない?」

「それも、リボーンくんから?」

「…ううん。俺自身の言葉だよ。」

柔らかい笑みを浮かべてさらりとそんな言葉を吐く。
そんなツナに中学のダメツナの姿は見えない。

「冗談だよね?」

「じゃあ、俺らの素性を知っている一般人保護のために一緒に来てくれる?」

「素性?なにそれ…?」

優れた勘の前には通じなくてもとぼけて見る。

「はぁ…。俺が名前を好きだから来てって言ったんだ。
それにさ、俺は読心術が使えるんだよ?」

…読心術は初耳だよ、ツナ。

嘘ついても意味ないって事か…。
じゃあ、隼人への気持ちもバレてたって事……?

「…っ、嘘吐いてごめん。でもさ、隼人への気持ち気付いてたんだよね!?」

「そこは、見ないようにしてたから…。
けど、見てれば分かるよ。好きだから。さ、帰ろうか?」

屋上を見上げと二人は消えていた。

「…うん。」

さぁ、忘れよう。前に進まなくちゃ意味がない。

「あ、えっと…、泣く?」

「泣きそうだけど泣かない。」

「えー!?なんでー!?」

「強くて優しいツナにお似合いの人になるため」











〜小話〜
「…やっとか。さっさと前に進んでくれよな、ほんと。」
「え、なにが!?」
「なっ!?なんでもねー。10代目とおめぇの親友だよ。」
「あぁ…。ていうか、隼人でも人の心配すんだねー。」





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