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愛ってなぁに?《R18》(シリウス)
















最初は、弾み。
次は、捌け口。
その次は、互いに求め合った。



好きだなんて言葉を口にして、
甘ったるくも苦い関係が崩れるのは嫌だった。

愛してるって
たった一言を行為中に囁いても冷たい目を向けられる。
俺もだと返されるのは目前の獲物を逃がさないため。
熱を冷めさせないため。
彼の目前にいるのは私であって私でない。


「ね、はげ…しっ…ンぁ…」

いつもよりも乱暴で八つ当たりされてる気分だった。
体の痛みよりも、心が痛くて涙が出た。

「好きだろ、名前」

名前を呼ばれる度に心が軋む。
月明かりを背に微笑む彼。

全然、好きなんかじゃない。
それでも、身体は快楽に飲み込まれていく。
互いの情欲を紛らわすための産物。

彼は恋をしている。
恋の相手が誰だかなんて、野暮な事聞くなといわれた。
私も恋をしている。
恋の相手が誰かを彼は知っていると言っていた。

互いに実らない恋へ、
叶わない相手へ想いを告げられずにいた。

何度か交わって、何度も恋の話をした。
手狭な部屋の簡易ベッド。
行われている行為は誰も知らない。
二人だけの手軽な秘密。

彼の仲間は知っているのだろうか?
魔法の羊皮紙に私と彼の名前が刻まれているのだろうか。

「だめっ、そこ…ひ…ぁぁ…ッ」

「悦んでんだろ、っ…イけ」

イイ所を突かれて頭の中が真っ白になりながら私が達すれば、
彼も私の中で果てた。


「ん…、別にあんたの物じゃないでしょ?」

黒の長髪を後ろに束ねている彼からつけられた首筋の赤に自分の眉が自然と歪む。

「それみたら嫉妬くらいすんだろ、優等生のムーニーでもな。
つか、相変わらず行為中以外は可愛さの欠片もねぇ」

鼻で笑われた。
顔立ちがハンサムで、否が応でもその仕草が似合う。

「馬鹿言ってないで服着なさいよ。
それじゃあ、私が貴方の娼婦みたいじゃない」

私の彼への恋は虚像だった。
そう気付いたのはつい最近。

ただの『憧れ』
こっちが『恋』

貴方に近づくための口実なのだといえば、彼は怒るだろうか。

…印をつけられる。
その行為がまるで貴方の恋の相手が私で、
それを束縛するのが貴方みたいだ。

「さあ?ヤってる事は同じだろ。
対価がちょっと違うだけでな」

シーツに包まりながら二人で横になって寄り添いあってる姿は恋人のそれ。

「私に性病うつさないでね」

「お前だけにしかシてねぇよ。誘われてもな」

「へぇ、プレイボーイのくせに」

「スニベリーに言われた。
お前を傷つけるなってな…?スニベリーのくせして。
それが、俺の仕掛けた悪戯を秘密にしておくための唯一の対価らしい。
好かれてるな、気味が悪ぃぜ」

「リリーと決裂関係にあったんだから仕方がないのよ。
私は、むしろ、リリーが好きになれないから…。
彼には嫌われてると思ってた」

私とリリーが悪戯仕掛人のストッパーに化してきて、
セブがぶっきらぼうにお礼を告げてから私達の関係は友人になった。
たとえ闇に傾倒していようが別に関係ない。
そう、言い切ればプロングスからは怒られた。
初めて従兄殿とその友人に怒られた。
大事なのは従兄に叱られた事ではなくて、その『友人』にも怒られた事。
そのショックで泣いてた弾みでその『友人』と至った行為が、
これだなんて笑えない。

「ばか、早く服着ろ。ムーニーがここに来る」

「え?ちょ、なんで!?」

たった一言短く見回りだと彼は言った。
痛む腰を無視して、
手早く服を着込んでベッドから出て靴を履く。

「あいつはちゃんとお勉強してるか今日から見に来るって言ってたからな。
寮ではお前の従兄の邪魔のせいで、
満足に出来ないって言っておいて正解だな」

部屋が急激に変化をし始めた。
一つのランプと勉強机、それから二つの椅子が現れた。
元のこの部屋の姿に早変わり。

「名前、パッドフット。いるかい?」

「ああ、入れよ。ムーニー」

扉を開けて入ってきた彼は穏やかに笑っていた。

「リーマス、」

「ちょっとシリウスを借りるよ」

にこやかな笑顔に頷いた。









少し経ってから戻ってきた彼に、
抱きしめられるまであと10分。





【続く】





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