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遠距離恋愛(ボンゴレファミリー)







初めての旅行で浮かれてしまっていた。
隣にいたはずのハルや京子とはぐれてしまってから数時間が経過した。

迷いに迷って、薄暗い路地の近くまで来てしまうなんて思いもしなかったのに。
イタリアって幻想的だなーとか呑気に考えてるんじゃなかった!!

折角、ツナ達にも会えると思ったのに…。どうしよう。見知らぬ町で一人ぼっちなんて泣けてくる。



「…なぁ、お前なんて名前?」



突然現れて声をかけて来た人物に驚いた。
…足音がしなかった。むしろ、前にすら立ってなかったよね?
前髪で隠れて目の見えない金髪にティアラをして「…シシッ」と笑った人物は首を傾げている。

「へ?」

「なに?王子の質問に答えらんねぇの?」

「えっと、まず、どちら様ですか?」

「は?…ていうか、あんた、覚えてねーんだ」

どうやら、王子様の期限を損ねてしまったらしい。
なんだか不穏な空気になったためコクコクと必死に頷く。

「…ベルフェゴール。王子って呼べって言いたいとこだけど特別にベルって呼ばせてやるよ。
俺、あんた気に入ってたし。…で、名前は?」

「あ、名前です。」

「名前ね。…やっぱ綱吉のとこの奴じゃん」

急にふわりと宙に浮いたかと思うと何故だか担がれていた。

「…えっ!?」

「綱吉の所まで案内してやるよ。嵐くんにも言われたからしょーがねーし」

「嵐?あ、隼人くん?」

「今は俺が名前を独り占めだから他の男の名前出しすなよ」

屋根の上を飛びながら独特な笑いも零しつつも屋根を伝っていき、数分すると広いお屋敷の前に着いた。
通信機なのだろうか?それに手を当てて話すベルさん。未だに顔はよく見えない。

「ダメボスー、そっちの嵐くんからの任務終わったぜー」

「――…っ、うわ、撃つなよリボーン!!!…は、早いですね。ありがとうございます」

「俺、王子だから当たり前。……さっさと門開けろよ」

どんどん不機嫌になるベルさんにいつのまにか姫抱きにされていて恥ずかしさで頬が赤くなる。

「…ひっ!!「うっせぇぞ、カスがっ…!!」…ちょっ、どっから現れたんですかー!?」

通信機の先から聞こえてくる聞きなれた悲鳴に苦笑いを浮かべる。
銃声っぽい物はきっとクラッカーだよね。
その間にもう長い廊下を渡り終えたようで、煌びやかなドアの前に来てしまった。

「なぁ、顔真っ青だけどボスの殺気にやられた?」

「…いえ、無駄な煌びやかさに驚いているだけです。」

殺気というか、半端じゃない威圧感が中から漂っていた。

「シシッ、なーんだ。心配して損した」

「なんだか、ごめんなさい!」

「んー、特別に許してやるよ」

鼻の頭に軽いキスを落とすとベルさんはご満悦と言った感じに笑った。

「ベルさん…!?」

「なー、遠距離恋愛してみねー?」

「え、ええっと、え?」

そうしたら、今度は彼の顔が近づいてふにりと生暖かい物が唇にあたった。
まさに、一度に色んな事が起こりすぎてパニック。


「返事は後で準備しといてよ」




姫抱きからちゃんと降ろされると、アニメや童話のプリンセスみたいに今度は手を引かれエスコートされる。
……扉を開けて進むと中学時代からよく見慣れた顔ぶれが揃っていた。
あとは、なんだか見覚えのある奇抜な集団。

「なんで、総出でお出迎え?」

「名前が10代目の大切な奴だからだろうがっ!!」

突然、怒鳴ってくるのは相変わらずな隼人の第一声。

「ちょっ、隼人ーっ!?あ、えっと…。ようこそ名前ちゃん。」

少し頬を真っ赤に染めながらにへらと昔よりも大人な顔つきで笑みを浮かべるツナ。
相変わらずだなぁ、と幼馴染の笑みを見て顔が綻ぶ。

「ははっ、ツナって分かりやすいのなー。久しぶりだな名前!!」

ニカッと爽やかに笑いながらグシャグシャと頭を撫でてくる武くんの兄貴肌っぷりも変わってなかった。

「クフフ、貴女に会えるのを楽しみにしていましたよ名前」

色気たっぷりに口角をあげる骸さんは、優雅な動作で膝をつき艶かしく私の手の甲へキスを落として見つめてくる。
彼を見下ろしている私の顔は多分真っ赤だ。

「骸様は気にしないで、名前」

ニコリと可憐な笑みを浮かべるクロームちゃんは武くんより優しくゆっくりとした動作で撫でてくれた。

「…群れは好かないけど、君がいるからね」

フンッと鼻で笑うと骸さんとは反対の手の甲にキスを落とし、雲雀先輩は色気を振り撒く。

「高校の卒業式振りでしょうか?」

「そうなるね」

クスリと笑ったかと思えば頬へと口付けられた。

「極限にお出迎えだぞっ!!」

変わらない了平さんは、清々しい笑みで出迎えてくれた。

「名前さん、お久しぶりです。拙者の事、覚えていらっしゃいますか?」

走り寄ってくる優しい笑みを浮かべた青年。

「…バジルくん?」

そう答えると嬉しそうにはにかんで「はい!」と言ってくれた。

「おい、カスが俺より先に挨拶してんじゃねぇ」

パリンと挑発銀髪にグラスをぶつけ、威圧感たっぷりに笑う人の登場にに内心ビクつく。

「う゛お゛ぉぉぉいっ!!…あぁ、そうだ。久しぶりだな、覚えてねぇと三枚におろすぞぉ」

溜息を吐きながら髪についた破片を払っていく人の三白眼がこちらを睨む。

「ボスも皆さんも男の嫉妬は醜いですよー。ありえないですよ、ねー。名前さん。
フランですー、覚えてないとは言わせませんよー」

カエル頭の彼はフランくんは無表情。

「ちょ、人の物とろうとかまじありえねーんだけど。
名前は俺のだし」

「おい、カス、どういう事だ……?」

「ボスには悪いけど、俺ら遠距離恋愛するから♪」

「ベ、ベルさん!?…まだ返事してないっ」



「それっていつ決まったの…!?」

ツナが驚きに目を見開くのが分かった。

「さっき♪」







だんだんと、不穏な空気になっていく。






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