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一緒に笑った日(骸)


最近、見知らぬ子が千種や犬、そしてクロームに
食料を与えているらしい。

僕にそのような知り合いはいません。

沢田綱吉でもないそうですから。
その守護者達も必然と除外される。

けれど、それに近いところにいる者なのは確かです。

千種がいうには「面倒なおっせかい焼き」
犬がいうには「結構いい人」
クロームは「あの人は優しい」

僕は知らない。
ただ、いつも彼女は笑ってこういうらしい。


「骸君には内緒だよ?」と。


僕らの間には内緒もなにも、秘密や隠し事など通用しない。
そんな間柄なのを知らないのでしょう。

僕の名前を見知らぬ誰かが知っているのは少々気に障りますね。
そう思いながら、住処である廃墟を進む。
すると、楽しげな笑い声が聞こえる。
クロームとは違った暖かい声色。女?

「・・・やっと姿が見れるのですね?」

扉に手を掛けると、中から声が聞こえてきた。

「名前、そっちはだめらぴょん!」

「え、なんで?」

「めんどい、…けど、骸様が起きるから駄目だ」

「…名前。そっちは、だめ」

彼等は僕と彼女を会わせたくないようですね。

「犬、僕はもう起きていますよ。そちらは、どちら様ですか?」

スッと目を細めて見知らぬ女を見つめる。

「あ・・・、えっと初めまして?」

戸惑うような笑いを見せる彼女の手にはお菓子の入ったビニール袋。

あぁ、彼女なのか。そう思うと不思議と笑みが零れた。

「・・・骸様が笑った。」

クロームがポツリと呟く。その横で目を見開いている犬と千種。

「初めまして。彼等に食料を与えてくれているのが貴女なんですね。」

警戒心が言葉に滲まないように、紡ぐ。

「すいません。勝手な事しちゃって」

彼女の顔から笑みが消えた。

「別に、誰も貴女を責めるつもりはありませんよ」

安心させたい。その思いで笑った。

「・・・よかった。」

へたりと座り込んで僕を見上げて笑う君に心臓が一瞬高鳴った。
心が温かい。その笑顔で心が満たされた気がした。
そして、それが消えると喪失感。不思議な気持ちがしますね。



「名前を教えて頂けませんか?」


普段なら冷静にここから追い出してしまうはずだ。普段の僕なら。

「名前です・・・。骸さんの話は幼馴染から聞いて、」

「沢田綱吉ですか?」

「・・・というよりも、リボーン君です。」

たった数分で、僕は君に恋をしてしまったようです。
一目ぼれなんて、
そもそも僕のような者が恋をするなんてありえないのに・・・。
今は感謝しておきましょうか、アルコバレーノ。

「名前。また、ここに来て笑ってくれませんか?」

やっと搾り出せた一言は、彼女に会うための次の約束。




「はい。」

そう言って笑った彼女に僕も微笑んだ。






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