夕陰草
結びとどめ05
「ご飯まだだよねって言いたいとこだけど」
「……? 」
大貫の後を追うようにリビングに入ると、テーブルにパンの入っているであろう袋をガサッと置きながら、大貫が振り返った。
「ちゃんとお仕置きしなくちゃねー? 」
そういう大貫の顔が奇妙に歪んだ笑顔になっていて、要は咄嗟に逃げようとする。しかし、それよりも早く動いた大貫は簡単に要の腕を強く捕まえる。
大貫が自分に危害を加えないと信じる傍ら、過去の出来事に縛られて、もしかして……と思ってしまう自分も居る。だから勝手に身体が強張った。
「そう怯えられると、逆にそそるんだけど? 」
大貫の顔が近づいて来て、互いの鼻先が少しだけ触れた。
バクバクと心臓が暴れる。
艶っぽくて意地の悪そうな強い目でじっと見つめられ、要はその瞳を直視できずにぎゅっと目蓋を閉じた。
「ふふふっ」
近すぎる距離で大貫が笑うと空気が振動する。どうしたら良いのか分からなくて目を開けることも出来ず、要は無意識に体を震わせる。
「お仕置き、痛いことはしないよ。違う意味で啼かせてあげる」
ふんわりと互いの唇が重なり、啄むような優しいキスで要のからだの力が徐々に抜けていった。
うっすらと目を開けると、大貫の欲に濡れた厭らしい瞳に捕らわれる。
「寝室行こっか」
大貫の細められた目に背中がぞくりと震える。
ぐいっと強引に引き摺られるように寝室に入ると、勢いよくベッドに押さえ込まれた。
ニヤリと笑う大貫に要は鼓動を早くさせる。耳の奥に心臓があるのではないかと思うくらい心音が煩い。
「何でお仕置きか、分かってる? 」
要の耳元で大貫が欲に濡れた低い声で囁く。そんな声にも要はふるりと体を震わせ、コクりと頷いた。
そんな要を満足そうに見ていた大貫は、要の唇に食らい付くようなキスをする。
性急な口づけは要を狼狽えさせる。
歯列を割り舌を絡められ、時にキツく吸い上げられて息をすることすら難しい口づけに、ちゃんと求められている気がして要は自ら大貫に応える。
互いの唾液の混じる淫猥な音が寝室に響く。
「……あ」
キスの合間にわずかに反応を示す要のペニスを大貫がさらりと掠め触れてくる。たったそれだけのことに要は体を揺らして反応する。
「服、邪魔だ」
大貫はそう言うなり、要の来ているスーツを手際よく脱がしにかかる。ネクタイに指をかけスルスルと外すと、シャツのボタンを器用に開けジャケットごと脱がされる。さらに器用にベルトを片手で外し靴下ごとスラックスを足から抜いてベッドの下に落とされた。
一瞬で自分だけ下着姿に剥かれ、要は羞恥に顔も体も赤くする。
「恥ずかしい? 要、可愛い」
大貫はニヤリと笑うと要の体を遠慮なくまさぐりだす。キスは唇を離れ頬、首筋、鎖骨と徐々に下へ降り、手は胸の飾りを摘まんだり押し潰したり、しっかりと要の感じる場所を攻めてくる。
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