夕陰草
結びとどめ03
「子供ねぇ。たしかに子供は欲しいよね」
「昭斗!だったら! 」
「じゃあこうしたら? 」

大貫が良いことを思い付いたというように二人に笑顔を向ける。
要は良くない予感がして聞きたくはなかったけれど、無情にも大貫は言葉を続けた。頭が、ガンガンする。

「俺、要の子供がほしいから由深が産んでよ。その子を3人で育てたら? 」

大貫の言葉に要は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた

「……大貫? 」
「本気なの? ……昭斗」

要と由深が同時に言葉を発する。

「本気だよー? 由深はこんな俺でもまだ一緒にいたい? 由深が俺を諦めないなら、そういう選択以外俺にはないんだけど」

大貫は面白そうに由深の答えを待つ。
要は何も言葉を発することができなくて、大貫の顔をただじっと見詰めていた。
そんな要とは反対に、由深は震えながら大貫の真意を問いただす。

「それって、それって私にこいつと寝ろって言ってるの? 」

由深が要を指差して大貫に問う。

「まぁ、そうなるのかなぁ? あ、でも要が俺以外と寝るとかちょっと許しがたいねー」

飄々と答える大貫に、由深は激怒したらしく今度は大貫に鋭い平手を見舞った。
大貫もそれは避けずに由深の平手を甘んじて受ける。
乾いた音が小さな公園に響いた。
その音に、叩かれたわけではない要の方がビクリと体をすくませた。

「私をなんだと思ってるのよ! 私、本気なのに! 」
「俺の彼女でしょ? 要とも離れる気はないけどね」

叩かれた頬をさすりながら、大貫は要を見てふんわりと笑う。要はこんな理不尽なことを言う大貫が信じられないのに、それでもドキリと胸を高鳴らせた。同時に落胆もしていた。由深とはやはりまだ彼氏彼女のままなんだと、突き付けられたようなものだ。大貫は、この関係をどう思って、どうしたいのだろう。受け身な要にはどうすることも出来ないし、どうしたらいいのか検討もつかない。
二人のやり取りを体を小さくして聞いていた。
「この男とも離れないって、じゃあ私とはどうなるの?! 」
「だから、それは由深次第だって言ってるだろ? 」

大貫の言葉に、ついに由深の瞳に涙が溜まっていく。それでも涙が溢れないように耐えてるに、要は思わず口を出してしまった。

「俺が居るから……俺のせいで……こんなことになって、ごめんなさい。今更だけどっ」

要は最後まで言葉を紡がせて貰えなかった。大貫の大きな手に腕を取られて引き寄せられ、唇を塞がれたのだ。
ビックリした要は、咄嗟に抵抗した。それでも大貫の力は緩むことはなくて、痛いほどに要の体を抱き締めてくる。
逃げる要の舌を、しつこいほど追いかけて絡めとってきた。


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