色彩繚乱
4
俺の前に出現したのは腰まである赤い髪にチャイナ服を身にまとった男だった。俺はさっきまでのことが吹き飛ぶくらい驚いた。
これは夢か?それとも現実なのか?
「初めまして。私は紅龍と申します。」
呆然とする俺に微笑むと跪き深々と頭を下げた。
「我が君、彩王が酷いことをして申し訳ありません。」
「俺は悪くない。素直にならない亜樹が悪い。」
ムスッとして腕組みをするサイは何時の間にかブラックスーツを着ていた。
「だから私が謝っているでしょう?」
私は全然、関係ないですが。と付け加えるとサイは眉間に皺を寄せた。
「お前は一言多い。俺の一部とは思えん。」
言い捨てるように言うとサイは姿を消した。だけど俺はもぅ驚かなかった。色々ありすぎたからだ。
「この空間は私が作り出したモノ。そろそろタイムリミットです。部屋で説明しましょう。」
俺も賛成した。此処は落ち着かないし陵辱されたことを忘れたかった。
「その前に服をお願いします。」
「えっ?」
「アナタの身体は美味しそう…いえ、目のやり場に困るので。」
「はっ!!」
差し出された服を急いで受け取り袖を通した。これ、アイツが着てた服だ。俺より身長も身体もデカいからか黒い上着は膝上まであった。
「行きましょうか。」
頷くと俺を抱き抱えた。何でお姫様抱っこなんだ?
「しっかり捕まっててくださいね。」
「あ、はい。」
この人はアイツと違って優しいみたい。顔はおんなじだけど。とりあえず首に腕を回し尋ねた。
「紅龍さん、時間、掛かるのか?」
「コウで構いません。大丈夫です。怖がらなくとも、一瞬です。」
「一瞬!?」
「ええ。瞬き一つで着きますよ。」
ウソだろ!?と思ったけど次に目を開けた時には俺の部屋だった。
「マジかよ…」
「唖然としてますね。その内、慣れますよ。」
「な、慣れる?」
「ええ。アナタは彩王の魂魄。決して離れることはできないのです。」
意味不明な単語に頭が混乱する。
「順を追ってお話しましょう。」
コウはゆっくり語り出した。俺の身辺調査をしたこと。此までの経緯。一概には信じ難い話だった。でもサイやコウ、それに瞬間移動を体験して嘘やまやかしではないという事実は否めない。
「ま、まぁ…科学では証明できない事が世の中に沢山あるから魅魍魎の類いがいても可笑しくないかもな。」
「魑魅魍魎とは心外です。我等は高貴な龍族。下等な輩と一緒にしないでください。」
わっ!睨んでる!
「も、もちろん!同じわけないじゃん!ははっ」
俺は追従笑いした。人外生物を怒らせると危険だからだ。だけどまさか自分もその枠に入るとは思わなかった。
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