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色彩繚乱
15
「こ、こんなはずじゃ…」

ノートを握り締め、わなわな震える俺にサイは「満点でなくとも一夜漬けにしては上出来だ。」と無表情で言った。

「えっ?」

「何だ?」

「あ、いや…」

恥辱を与えられるだろうと覚悟していただけにサイの言葉は予想外で戸惑った。

「ケアレスミスをなくせばもう少し点がとれるだろう。」

おまけにアドバイスまでしてくれるなんて。何か調子狂うな。

ピンポーン♪

突然のチャイムにビクッとした。

「誰だ?朝っぱらから。」

「新聞の勧誘とか?」

サイは眉根を寄せつつ、立ち上がり玄関に行った。俺は気になって耳をそばだてた。すると声の主は響だった。

マ、マズい。こんなとこ見られたら…ってサイが招き入れるわけないか。悠長に構えているとサイと響が目の前に現れギョッとした。

「恭弥、これで解ったか?俺はコイツの面倒をみなくてはならん。」

あ、そうか。響はサイの言葉を信用しなかったんだ。だったら支援しなきゃ。

「俺、追試があってサイに教えてもらってたんだ。」

愛想笑いをすると響は微笑した。これには一驚。絶対、嫌な顔をすると思ったからだ。

「僕も一緒に勉強しても良いかな?」

「あ、ああ。」

困惑しながらも了承したら響はサイに「僕、喉が渇いちゃった。何か飲み物、頂戴。」と甘えた声でお強請りした。

「コーヒーで構わないか?」

すんなり聞き入れるサイに俺は目を見開いた。もし俺がサイに甘えたら「ふざけるな。自分でしろ。」と言うだろう。なのに響の要望には応えるんだ。なんか、ショック。

「コーヒーで良いよ。」

サイがキッチンに行くと響は俺の横に座った。

「君のことは噂で耳にしたよ。白騎士に気に入られたお馬鹿なウサギちゃん。色目でも使ったのかい?」

「なっ!?」

「それとも二股かけるのが趣味?」

冷笑を浮かべ俺を侮辱する。流石に頭にきたけど年下相手に怒鳴るのは大人気ないと思いぐっと堪えた。

「俺はそんなことしない。向こうが勝手にほざいてるだけで、こっちは迷惑してるんだ。」

「でもファンクラブは君を妬んでいるからイジワルされないように気を付けなよ?ま、僕には関係ないけど。」

嘲笑う響はサイの前では猫を被り俺の前では本性を現す。コイツ、性格わるっ。取り合うのは止めよう。教科書で顔を隠し響を無視して単語に集中しているとコーヒーの香りが鼻についた。

「お前も飲め。」

俺の分まで淹れてくれたんだ。ちよっと嬉しいかも。

「ありがと。」

礼を言ってマグカップに口を付けた。

うっ…苦い。ブラックは飲めない。砂糖とミルクをもらおうっと。

「サイ、砂糖…」

「彩龍の淹れてくれたコーヒー、美味しいよ。僕の好み、忘れてなかったんだ。嬉しい。」

えっ!?

「お前はブラックしか飲まないからな。」

サイは響の好みに合わせたんだ。俺よりも。嬉しかったのに…

「コーヒーに砂糖とミルクは邪道だよ。君もそう思うだろ?宇佐木くん。」

悪意を含んだ目と歪めた口元は俺に対する挑戦だ。上等じゃん。受けてやる。

「コーヒーはブラックが一番だよな。」

意地でコーヒーを飲んでにっこり笑ってやった。

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