色彩繚乱
9
けれど俺が関わらないようにしても相手が来たら避けようがないわけで。
「は、珀皇…」
呆気にとられる俺に珀皇は笑顔で言った。
「君がなかなか来てくれないから迎えに来たよ。」
会長自ら俺に会う為に教室まで来るとは思わなかった。それはクラス全員も同じだ。驚いてるし、ざわついてるし。
「さぁ、手を取って?」
右手を俺に向け微笑する。この手を取っても拒んでもファンに妬まれそうで嫌だな。俺はコウに救いを求めた。
『コウ、俺、行きたくないんだけど何とかならない?』
『彼の身元調査しましたが溝口のような害はありませんでした。しかし、腑に落ちない点が幾つかあるので彼の懐に入って調べたいのです。彩王の許可は取っています。なので協力してもらえませんか?何かあっても私が守ります。』
頼みの綱から逆に頼まれ言い訳も思いつかず観念した。
「…解った。行くよ。」
差し出された手は無視して教室を出ようとしたらソウに呼び止められた。
「亜樹、僕も一緒に行くよ。」
「俺は大丈夫。ソウは類と帰ってくれ。」
腕時計を見せるとソウは躊躇いながらも小さく頷いた。そして珀皇と教室を出て生徒会室に向かった。
うぅ…居心地悪い。気まずい。
「もしかして緊張してる?」
緊張じゃなくて気が重いっつーか。
「いや…その…わざわざ俺に会いに来たのは何でかなぁ…って。」
「君のこと忘れられないんだ。これって君が好きってことになるのかな。だから僕の友人…生徒会役員に紹介したいんだ。」
「へ?」
さらっとスゴいこと言われたような?
「僕、君に告白したんだけど…伝わってない?」
俺を見詰める灰色の瞳は真剣で冗談じゃないのは解った。が、俺には恋人(仮)がいる。
「俺、付き合ってる…」
『亜樹、お待ちください!』
突然、コウの声が響いた。
『な、何だよ?』
『彩王とのことは伏せてください。類は言いふらしていません。ソウに確認しました。』
『え゛ぇ!?そういうことは早く言ってくれ!』
危うく言うとこだったよ。
『申し訳ありません。なので適当に誤魔化してください。』
くそぉ…簡単に言いやがって。うーん…
「宇佐木くん?」
「あ、えっと…付き合ってるじゃなくて…付き合うなら…女子…そう、女の子って決めてるんだ。ごめん。」
よし!ナイスな返答!これなら珀皇も諦めるだろう。
「普通はそうだよね。でも僕の心は変わらないから。」
めげない珀皇に唖然とした。
「こんな気持ち初めてなんだ。一目惚れっていうのかな。君を想うと胸が熱くなる。」
クサイ台詞を照れもせず言えるなんて容姿に余程、自信があるのか、歯が浮くわ。
「君の心に入り込めるように頑張るよ。」
頑張らなくて良い。迷惑だ。って拒めば良いのにどうしてか、コイツには強く言えない。何故だろう?拒絶出来ないというか、したらいけないような…
困惑していると珀皇は立ち止まり扉を開けた。
「どうぞ。」
促され中に入ったら3人の生徒が俺を見て2人が椅子から立ち上がった。
「俺は鳳翔。二年、会計だ。」
コイツも役員だったのか。この前と同じ、眉間に皺、寄ってる。気難しいそう。
「雛形千景、同じく二年、書記ッス。宜しくッス。」
人見知りしなさそうなタイプだな。
残るは副会長の夜桜由仁。黒騎士だっけ。座ったまま、そっぽ向いて俺と目を合わせない。見かけが良くても感じわるっ。
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