[携帯モード] [URL送信]

色彩繚乱


んっ…

頬を掠める冷たい空気にはっとした。

此処はどこだ?

見回す辺りは薄暗く耳を澄ませば微かな話し声。声のする方向にそろりそろりと進んで行くと青白い光を放つ無数の球体の中心でサイと長い白髪の青年が対座していた。

「お前をこんな目に合わせてしまったのは俺だ。謝っても謝りきれない。」

頭を地に付け謝罪するサイに俺は驚愕した。俺の知るサイは絶対、こんな真似しないからだ。

「…大丈夫。」

青年は唇だけ動かした。いや、唇だけしか動かせないんだ。何故なら、全身は勿論、顔面も包帯で覆われており見ているだけでその姿は痛々しい。

「彩王…悪くない。」

サイを彩王と呼ぶのはコウとソウだけ。まさか…

「…ハクよ。頼む。俺を責めてくれ。」

やっぱり白龍石。彼がこうなった原因はサイみたいだけど一体、何があったんだろう?

「ううん…」

口角を上げて笑みの形を作るハクにサイは今にも泣きそうな顔をした。初めて見るサイの表情は俺の胸を締め付けた。

「このままではお前が…」

「これも定め。」

ダメだ!!ハク!!受け入れたら龍国は…って龍国はどうなるんだ?俺はこの先を知っているのか?記憶を辿ってみたが全く心当たりはなかった。けど居ても立ってもいられなくて俺は2人に話し掛けようと決心した。刹那、不意に意識が遠退いた。

こんな時に…ハクを助けないと…もう少し…あと少しだけ…此処に留まりたい。


「…樹、亜樹!」

「っ!?」

目を開けたらサイの顔が飛び込んできた。

「あっ…」

「うなされていたぞ?悪夢でも見たか?」

あれが夢!?まるで其処にいるかのように鮮明でハッキリしてた。

「サ、サイは?」

「俺か?俺は見てない。起きたらお前がうなされてたから起こしてやったまでだ。」

「そ、そんな…俺はサイが苦しそうだったから起こしてあげようと思って…そしたら引っ張られて…」

「まだ寝ぼけているのか?」

呆れ顔で俺の頬を抓った。

「い゛っ!!何、すんだよ!!」

「目が覚めただろう?支度しろ。学園に行くぞ。」

言われて時計に目をやると始業時間まで30分しかなかった。

「うわっ!!ヤバッ!!」

急いで制服を着て洗面所で歯を磨き顔を洗って髪をセットしてマンションを出たら響がいた。

「彩龍、おはよう。僕も一緒に行っても良い?」

微笑む響は目を奪われるくらい艶麗で視線を逸らした。きっとサイも思ってる。こんな綺麗な子に想われて悪い気はしないはず。サイに会う為に待ってたんだ。俺って、お邪魔虫だよな。

「サイ、俺、先に行くから。」

サイの返事を聞く前に走った。

「はぁ…はぁ…」

夢のことやハクのことを聞きたかったけど響が居たら話せないし俺は響に嫌われてるし3人で歩いて学園に行くのは気まずいし。これで良かったんだ。そう思っていたら突然、コウの思念が入ってきた。

[*前へ][次へ#]

5/20ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!