色彩繚乱
10
その後、数名の生徒が保健室を訪れたが不機嫌オーラ全開の俺に話し掛ける者はいなかった。そして今日1日の授業が終了
しマンションに戻ると亜樹が出迎えてくれた。お蔭で苛立ちはおさまり用意された酢豚とビールに手を付けた。
「余った材料で作ったんだけど、どう?」
「悪くない。若干トロミに欠けるがビールにも合う。」
「今度はもうちよっと片栗粉入れるよ。ところで結界はどう?」
コウの状態を顧慮し精神疾患にしたことを話した。
「俺、其処までメンタル弱くないけど仕様がないよな。」
「結界が解けるまではコウに無理をさせるのは気が引けるが…お前は何をしていた?」
「俺は隣の部屋に荷物があるから整理してた。起きたの昼過ぎだったし…」
昨夜を思い出したのか顔を真っ赤にして俯いた。そういう仕草が男心を擽る。
「亜樹…」
「ち、ちよっ、たんま!」
後ろに後退り両手を前に出した。
「どうした?」
「力の為に必要なのかもしれないけど昨日も飯の途中だったし気絶するまで犯られるとキツい。」
力の為…確かにそうだがそれだけじゃない。肌と肌が触れ合い交わる心地良さ、体内に流れ込む精根は魂を震わせ事後は充実感と満足感で心が満たされる。なのに亜樹は俺の半身はこの感情を持ち合わせていない。俺とお前は一心同体だというのに。
「…解せん。」
恭弥がキッカケで引き出された感情は俺を当惑させた。
「サイ?」
自分だけだと思うと何も感じない亜樹に腹が立つ。
「俺、サイに何かした?」
こういうのは察知出来るのに俺の心情を汲み取れないとは…
「お前の鈍感さが癪に障る。」
「何、それ。全然、話が見えないんだけど?」
ムッとした声音に怒鳴りそうになった。その時『落ち着いてください!』とコウの声が脳内に響いた。
『起きたのか?』
『ええ。彩王の激昂に叩き起こされました。亜樹に何か言われたのですか?』
『俺を理解してくれない亜樹が悪い。』
『亜樹は悪くないよ?彩王が言葉にしないのが悪いんだ。思ってるだけじゃ伝わらないって。亜樹は僕らとは違うんだから。』
『ソウ、勝手に割り込まないでください。』
『だってこのままじゃ永遠に解り合えないし。リングは愛の証なら愛を言葉にしなくっちゃ。』
『あれはコウに言われたから言ったまでだ。愛の言葉なんざ知らん。大体、愛とは何だ?』
『えぇ!?彩王、龍国にいた頃は…』
『ソウ、今はそんなことどうでも良いです。兎に角、彩王は亜樹の機嫌を取ってください。』
『俺が?冗談じゃない断る。』
『亜樹に嫌われたくないのでしょう?』
『それはそうだが…』
『気分転換に外出なさったらどうです?亜樹も喜ぶと思いますよ。』
『…外出か。解った。』
思念を切りムスッとしている亜樹の手を握った。
「な、何、すんだよ!?殴るのか?」
「馬鹿が。一度でもお前を殴ったことがあるか?」
「ないけど…」
「外出するからお前も来い。」
「外に出してくれるのか?」
瞠目する亜樹に頷くと途端に顔付きが明るくなりコウの言った通り嬉しそうに笑った。
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