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色彩繚乱

「あ、彩龍さま。」

廊下で待機していた部下が頭を下げた。

「待たせたな。」

「いえ。この後のご予定は?」

当主に挨拶は済んだ。恭弥の面会も終わった。これからは俺の時間だ。

「私用がある。先に戻ってくれ。」

「車は置いていきましょうか?」

「必要ない。」

「承知しました。ではこれで失礼します。」

部下と別れた後、エレベーターで屋上に移動し人気がないことを確認して紅龍と蒼龍に思念伝達した。

『コウ、ソウ、アオイ。力を貸せ。』

『龍石探索ですか?』

紅龍は直ぐに反応したが
声は不機嫌。取り合わなかったのが気に入らないのだろう。ソウとアオイ無反応。寝ているなら叩き起こすまで。ピアスを外し指で弾くと空中で変身した。

「彩王!酷いではないか!儂を粗末に扱うとは何事ぞ?」

喚くソウは白装束に身を包み蒼い髪を2つに分けたツインテール。

「うにゃーん。せっかく寝てたのに、痛いにゃん。」

猫のように手を舐めながら背伸びをするアオイは黒い燕尾服にショートパンツとニーハイブーツ。
元は1つの蒼龍石が落下の影響で二分され体型も性格も幼児になってしまった。

「アオイ、語尾ににゃんをつけるでない!不愉快ぞ!」

「だって、彩王に会うまで猫になってたから口癖にゃん。ソウの変な喋り方よりマシにゃん。」

「こら、喧嘩をするな。」

「仕方なかろうが!好きで九官鳥に入ったのではないぞ!偶々じゃ!それに飼い主がじじ、ばばだったのじゃ!」

「それって最悪にゃん。可哀想にゃ〜。」

「ソウ、アオイ、いい加減にしろ。」

「にゃ、にゃ、耳障りじゃ!!その口、塞いでやるわ!」

ソウがアオイに掴み掛かろうとするとアオイは猫のようにスルリと避けた。

「鳥に捕まるわけないにゃん!」

「こ、この野良猫め!!」

あぁ…。これじゃ埒があかん。

「喧しい!!時間がない!さっさと聖剣に姿を変えろ!」

「ひっ!?」

「にゃっ!?」

2人は急いで抱き合い聖剣に姿を変え俺の掌中に収まった。ったく…毎回、この調子だ。早々に元に戻さないと五月蝿くてかなわん。

『コウ、結界を張れ。』

眼帯を取ると片目が紅い光を放つ。全ての龍石が揃っていたなら、こんなまどろっこしいことをしなくても良いのだが。

『彩王、準備出来ました。』

張られた結界の中心に剣を突き刺し神経を集中させた。しかし何も感じなかった。

『ソウとアオイが加われば力は増し二龍石も引き寄せられると思いましたが3年前と変わりませんね。まぁ、到着したばかりですし暫く様子を見ましょう。』

楽観的な紅龍に俺は嘆息を漏らした。街の中央に位置する病院。此処から感知出来ないということはこの街に居ないということになる。

『コウ、範囲を広げられるか?』

『私とソウ、アオイの力を集約すれば可能ですが1ヶ月ほど掛かります。』

1ヶ月か…仕方ない。

『彩王、申し訳ありませんが力を使い果たしたので休息します。』

『儂も休ませてもらうぞ。僕も疲れたにゃん。』

『ご苦労。』

そして、二龍石は沈黙した。たったこれだけで力が尽きるほど弱く脆い。我らにとって力の源は黒曜石。これを手放したのが一番の痛手だった。後悔しても遅いのだが…。

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あきゅろす。
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