色彩繚乱
9
午前の授業が終わり昼休みになるとコウが保健室に現れた。
「大分、疲労しているようだな。やはり維持出来ないか?」
「彩王から供給される力は十分なのですが…変化と探索の両立は消耗が激しく…休ませて頂きたいのですが。」
「ああ。学年主任に病状を説明している。ゆっくり休め。」
「…申し訳ございません。残りの力でマンションの結界を強化しましたのでご安心を…」
跪くと同時に紅龍石になり腕時計の中に消えた。溝口とのやり取りにコウも懸念し先手を打ったのだろう。恭弥はスルーされたが最優先は亜樹だから仕方ない。とはいえ溝口に関わるなと恭弥にメールしておこう。
『彩王、コウは?類とご飯に行くんだけど返事がなくて…。』
突然、ソウの思念が入ってきた為、文字を打つのを止めた。
『コウは休ませた。後はお前に任せる。類を懐柔しろ。出来るな?』
『もっちろんさ。類は単純でチョロいから、おだてたら木にも登りそうだよ。じゃ行って来まーす!』
ソウ1人に類を任せても大丈夫そうだ。再び携帯に手を掛けようとした時、ドアが開いた。
「せんせぇ〜、カットバンないっスかぁ〜。」
語尾を伸ばしただらしない喋り方の生徒が俺に近寄って来た。
「カットバン?何だそれは?」
「あっれ〜、通じない?んじゃ、バンドエイドないっスか〜?」
「バンドエイド?」
「もぅ、良いッス。」
勝手に戸棚から絆創膏を取り出し指に巻いた。絆創膏なら絆創膏と言え。紛らわしい。
「消毒はしなくて良いのか?」
尋ねると生徒は俺の顔をしげしげと見た。
「何だ?」
「前の先生と違うなぁって。」
「昨日から勤務している九重だ。」
「九重先生、俺は雛形千景。生徒会書記ッス。九重先生って彼女いる?それとも既婚者?好きなタイプは?趣味は?」
人なっこい笑顔で質問する雛形に絆創膏の箱を突き出した。
「箱ごとやるから大怪我した時だけ来い。」
「えぇ!?」
「俺は忙しい。無駄話に付き合う暇はない。」
冷たくあしらうのは鬱陶しいからだ。
「面白みのない先生は嫌われるッスよ?」
「は?」
「先生、顔はイケてるから愛想良くして話術を磨けばモテるッスよ?あ、でもオヤジギャグはスベるとハズいッスからね。」
ガキに意見されるとは思わなかった。開いた口が塞がらん。
「九重先生ってば俺の尊敬する人と同じ匂いッス。これ野性の勘。」
満面の笑みで訳の解らないことを言う。最近の男子校生は皆、こんな感じなのか?年上を敬わず男のくせに喋りで言葉遣いもなってない。頭が悪いのか馬鹿なのか?
「やべっ、昼休みが終わっちまう。九重先生、また来るッスね〜!」
俺に箱を押し付けると慌てて出て行った。
「クソ生意気なガキめ。今度来たら口に絆創膏を貼ってやる。」
貴重な昼休みを雛形に奪われ腹立たしさに机上の缶コーヒーを握り潰した。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!