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色彩繚乱

午前の授業が終わり昼休みになるとコウが保健室に現れた。

「大分、疲労しているようだな。やはり維持出来ないか?」

「彩王から供給される力は十分なのですが…変化と探索の両立は消耗が激しく…休ませて頂きたいのですが。」

「ああ。学年主任に病状を説明している。ゆっくり休め。」

「…申し訳ございません。残りの力でマンションの結界を強化しましたのでご安心を…」

跪くと同時に紅龍石になり腕時計の中に消えた。溝口とのやり取りにコウも懸念し先手を打ったのだろう。恭弥はスルーされたが最優先は亜樹だから仕方ない。とはいえ溝口に関わるなと恭弥にメールしておこう。

『彩王、コウは?類とご飯に行くんだけど返事がなくて…。』

突然、ソウの思念が入ってきた為、文字を打つのを止めた。

『コウは休ませた。後はお前に任せる。類を懐柔しろ。出来るな?』

『もっちろんさ。類は単純でチョロいから、おだてたら木にも登りそうだよ。じゃ行って来まーす!』

ソウ1人に類を任せても大丈夫そうだ。再び携帯に手を掛けようとした時、ドアが開いた。

「せんせぇ〜、カットバンないっスかぁ〜。」

語尾を伸ばしただらしない喋り方の生徒が俺に近寄って来た。

「カットバン?何だそれは?」

「あっれ〜、通じない?んじゃ、バンドエイドないっスか〜?」

「バンドエイド?」

「もぅ、良いッス。」

勝手に戸棚から絆創膏を取り出し指に巻いた。絆創膏なら絆創膏と言え。紛らわしい。

「消毒はしなくて良いのか?」

尋ねると生徒は俺の顔をしげしげと見た。

「何だ?」

「前の先生と違うなぁって。」

「昨日から勤務している九重だ。」

「九重先生、俺は雛形千景。生徒会書記ッス。九重先生って彼女いる?それとも既婚者?好きなタイプは?趣味は?」

人なっこい笑顔で質問する雛形に絆創膏の箱を突き出した。

「箱ごとやるから大怪我した時だけ来い。」

「えぇ!?」

「俺は忙しい。無駄話に付き合う暇はない。」

冷たくあしらうのは鬱陶しいからだ。

「面白みのない先生は嫌われるッスよ?」

「は?」

「先生、顔はイケてるから愛想良くして話術を磨けばモテるッスよ?あ、でもオヤジギャグはスベるとハズいッスからね。」

ガキに意見されるとは思わなかった。開いた口が塞がらん。

「九重先生ってば俺の尊敬する人と同じ匂いッス。これ野性の勘。」

満面の笑みで訳の解らないことを言う。最近の男子校生は皆、こんな感じなのか?年上を敬わず男のくせに喋りで言葉遣いもなってない。頭が悪いのか馬鹿なのか?

「やべっ、昼休みが終わっちまう。九重先生、また来るッスね〜!」

俺に箱を押し付けると慌てて出て行った。

「クソ生意気なガキめ。今度来たら口に絆創膏を貼ってやる。」

貴重な昼休みを雛形に奪われ腹立たしさに机上の缶コーヒーを握り潰した。

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あきゅろす。
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