色彩繚乱
14
「…羨ましいな。俺も1人なら良かった。」
マックスの言葉に俺の頭は一瞬、真っ白になった。
羨ましい?1人が?
聞き間違いだと思い「それ、マジで言ってんのか?」と尋ねたら「だって楽だろ?」と答えた。1人になったこともないくせに平然と口にする。その無神経さに怒りがこみ上げてきて思わず胸倉を掴んで睨み付けた。
「ぶざけんなよ?運命を宿命を受け入れざるおえなかった俺の気持ちが解るか?逃れたくても逃れられず抗いたくても抗えず自由を奪われそれでも生きていかなきゃならない俺の気持ちがお前に解るか?」
感情が高ぶり涙が零れそうになった。
「亜樹ちゃん…」
はっ!?
掴んだ胸倉から手を離し詫びた。
「…つい、カッっとなって…悪い。」
「いや、俺の方こそごめん。でも気持ちは解る。俺も逃れられないから。アイツに…俺の仇に。」
長めの前髪から覗く双眸が底無し沼のように暗く澱んで見えてゾクッとした。俺の気持ちが解る?仇ってどういう意味だろう?髪が白いのと関係があるのか?
聞きたいけどこんな目をしたマックスに尋ねるのはヤバそうだし変に関わると厄介事が増えるそうで思いとどまった。
「じゃ…部屋に戻るよ。」
「待って。俺、亜樹ちゃんのこと益々、気に入ったぜ。」
それって好意を持たれたってこと?だとしたらマズい!
「お、俺、感情の起伏激しいしツッコミ下手だし気に入られる要素なんて1つもないし俺なんかよりもっと良い奴いるから。」
好かれると迷惑なので自分を卑下するとマックスは俺に抱き付いた。
「うわっ!?」
「正直な奴。そういうのはポイント高いんだぜ。グッとくるわ。」
どうしてこうなるんだ?
焦る俺にソウがオロオロした。
『亜樹、マズいよ!彩王が怒ってる!』
えっ!?サイが?
『僕の視覚は彩王の視覚。つまり僕が見たものは、彩王も見てるんだよ!』
『マジ!?そういうことは早く言ってくれよ!』
『五感を共有してるってコウが言ってただろ?兎に角、覚悟しといて。』
『ち、ちよっ、覚悟って何とかしてくれよ!』
「亜樹ちゃんは良い匂いするなぁ。」
首に顔を埋めるマックスに俺はソウに助けを求めたけど返事はなかった。
くそっ!!ソウの薄情者!!
「マックス、離れろ!!」
俺よりデカい身体を力一杯、押し返した。けどびくともしない。こんなとこサイに見付かったら…
ばきっ!!
「へっ!?」
ゆっくりとマックスが崩れ落ちた。もしかして…
「ひっ!?」
俺はサイを捉えた瞬間、逃げ出した。やましいことはしてないし俺に非があるわけでもない。だけど本能が警笛を鳴らす。
「逃げるのが好きな奴だ。」
逃げるのが好きな奴なんかいない。いたら鬼ごっこで遊ぶ時だっつーの!
俺は脇目もふらず全速力で走った。走って、走って…
「あれ?」
浮いてる!な、何で!?
「イヤだーっ!」
叫ぶと同時にサイの胸の中に落下した。
「捕獲終了。」
無表情で見詰めるサイにビビってしまう。逃走した後ろめたさから目を合わせられない。
「お、下ろしてよ?」
遠慮がちに言ったのにサイはスタスタ歩き始め階段を上って行く。
「待て、待て。俺の部屋は二階だ!」
上には誰もいないはず…ということは…。俺は恐る恐る質問した。
「…サ、サイ。此処でしないよな?」
サイは片目で俺を一瞥したあと足で扉を蹴り開けた。
「うわっ!?」
驚く間も無くベットに放り投げられた。
「い、いててっ…」
俺は荷物じゃあない!そう怒鳴ろうとしたらサイは俺の上に馬乗になって首に手を掛けた。
「ひっ!!?」
ま、また首を絞めるつもりかよ!?
俺は身の危険を感じて身体を硬くした。
「…や、やめろ。」
「お前は俺に不愉快な思いをさせた。その償いは身体でしてもらう。」
不愉快って俺は被害者だってーの!!
「あ、あれは…向こうが勝手に…っ!?」
言い訳を唇で塞ぐと舌が進入してきた。
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