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色彩繚乱
13
「ふ〜っ、良いお湯だった。精霊のお湯に浸かると疲れが取れるなぁ。」

お肌はしっとり、体力気力共に回復。湯治目的で精霊界を訪れる龍人も多い。

「此処の湯はパワースポットから湧き出た水を沸かしているからな。黒曜石と同化しているお前には特に効果があるだろう。」

「うん。龍国の水より澄んでて飲んでも美味しいよな。」

「ふん、それくらいしか取り柄がない田舎くさい所だ。」

ひねくれた言い方するなぁ。

「自然が一杯あって空気は綺麗だし食べ物は新鮮だし癒やしの場所だって龍人達にも人気があるんだよ。」

「言われずとも承知している。」

妖精界を誉めたからってムッとすることないのに、そういうところは子供っぽいんだから。

バスタオルで濡れた身体と髪を拭き着ていた服を探したけど見当たらなかった。

「サイのもないよ。」

「使用人が処分したんだろ。汚い物や汚れた物を嫌う種族だからな。」

そんなに汚れてたっけ?
セックスする前に脱いだから汚れてないと思うけど…ん、待てよ。アイスが襲われる前に風呂、入ったからその後は…うん、入ってないな。

「でも何でスーツなんだ?」

「ハイネスと会食だ。」「ああ、そうか。だからスーツなんだ。」

替わりに用意された下着とスーツを身に付けた。制服とは違うからシャキッとする。

「再びスーツを着ることになるとは…飯食うだけならラフな格好で構わんだろうに堅っ苦しい奴め。」

ブツブツ文句を言いながらネクタイを締めるサイが格好良くて見惚れてしまう。黒も良いけど紫も似合うなぁ。黒に近い紫だからかも。

「お前はスーツに着られてるみたいだな。」

カチン!

「煩いな、着慣れてないからだよ。」

自分は着こなしてるからって…

「アキ、後ろを向け。髪を結んでやる。」

俺のネクタイを持ってるということは…ネクタイで結ぶのかよ!?

「スーツにネクタイは必要だろ。他に無いの?」

「バスローブの紐よりマシだろうが。」

「そりゃあそうだけど。
ドライヤーで乾かせば…」

「妖精界に電気やガスはない。勿論、携帯もだ。」

ああ、そうだった。火と水と風の精霊がこの城の電力源だ。フランがこの世界に科学を持ち込めば変わるだろう。何時になるか解んないけど。

「三つ編みとか出来ないの?」

「出来ると思うか?」

ですよね。はぁ…半乾きじゃみっともないし。
「思い切って髪を切ろうかなぁ。」

「無駄なことは止めておけ。切っても直ぐに伸びる。髪は力の象徴だ。俺の片目が黒曜石だった頃、切っても直ぐに伸びたからな。」

切っても伸びるとか漫画のネタかよ。

「ノータイでも失礼にあたらないかな?」

「ならば俺も…」

結んだネクタイを解きボタンを外し胸元を開けた。何だかホストみたい。

「これでお前だけじゃなくなったぞ。」

俺に合わせてくれるなんて優しい…なーんて思うかよ。単にネクタイが窮屈なだけだろ。スッキリした顔してるし。

「結んでやるから後ろを向け。」

上機嫌のサイを不機嫌にさせるわけにはいかないから仕方なく後ろを向いた。

「痛くしないでよ?」

「ふっ、痛いの好きだろ?」

「バっ、バカ、好きじゃ…い゛っ!!」

髪を引っ張られムカついたから睨み付けると頭を固定された。

「大人しくしてろ。」

大人しく出来ないことしやがって…と言い返したいのを我慢した。妖精王を待たせるわけにはいかないし。

ジッとしていると束ねた髪を上に持ち上げネクタイでキツく縛った。ポニーテールじゃなくても良かったのに項がスースーする…

「うひゃんっ!」
唐突に項を舐められ変な声が出た。

「感じたか?」

「んなわけあるかっ!!」

サイから離れ赤くなった顔を腕で隠した。

「可愛い反応をするな。押し倒したくなるだろ?」

ニヤリと笑うサイに身の危険を感じた俺は先に浴室を出た。するとサイも
出て来て俺の前を歩き始めた。

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