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色彩繚乱
13
「頼もしいですね。アナタも彩王の一部。期待してますよ。では私はこれ失礼します。」

俺の頬にキスしてから姿を消した。

「あ〜、コウの奴、亜樹のぽっぺにキスしたぁ。ねぇ、僕もして良い?」

対抗心なのか嫉妬なのか解んないけど俺の頬を両手で挟んで物欲しげに見詰める。断ると駄々をこねられそうなので小さく頷くと唇と頬にキスした。

「じゃ、僕、一休みするね。」

嬉しそうに笑うとネックレスの宝石にそっと触れた。瞬間、ソウの身体が吸い込まれた。

「へぇ…便利。」

こうも度々、非現実的な場面を見せらると日常が非日常に変化しても冷静でいられるなんて慣れって怖いよな。

「はぁ…」

仕方なく貰ったネックレスを首に付けた。すると頭の中でソウの声が聞こえた。

『亜樹、僕、ちよっと眠るけど何か合ったらネックレスを振って?直ぐ起きるから。』

『了解。お休み。』

さて、どうしようかな。寮内を見て回ろうかな。暇だし。

部屋を出て階段を下りたその時、背後から「アンタ、誰?」と声を掛けられ振り向いたら白髪の男がイージーパンツに手を突っ込み不審者を見るような眼差しを向けた。俺は慌てて自己紹介した。

「俺は宇佐木亜樹、二年です。今日からお世話になります。宜しくお願いします。」

軽く頭を下げた。団体生活は最初が肝心。印象良くしておかないと。

「おぉ〜!季節はずれの転入生か!話は聞いてるぜ。」

いきなり俺の手を握り屈託なく笑った。

「俺、真楠。亜樹ちゃんと同じ2年だよ。宜しく。」

あ、亜樹ちゃん!?初対面でこの馴れ馴れしさは何だ!?

「あ、あの…手、離してくれない?」

こっちから離すと悪いと思い作り笑顔で言ったけど「へぇ〜。亜樹ちゃんって綺麗な顔してんなぁ〜。」と至近距離でガン見。

ち、近っ!!

急いで後ろに下がり牽制球を投げた。

「俺、そっちのケないんで近寄らないでください。」

「俺、ノンケだけど亜樹ちゃんならイケるぜ?」

似たような言葉なら聞いた。男を好きになったのは宇佐木が初めてだ。って。男に好かれても気持ち悪いだけだっつーの。

「俺は完全なノーマルなんで。」

「そっか。残念〜。」

笑いを浮かべるその顔は全然、残念そうじゃあない。なんか変な奴。

「ところで寮長は?挨拶したいんだけど。」


「俺が寮長だ。」

げっ!?マジ!?

「あ〜!何、その嫌そうな顔。傷つくわぁ。俺、デリバリーなんですぅ。」

胸に手を当てて大袈裟によろめく真楠に俺は呆気にとられた。

「亜樹ちゃん、呆れてないでツッコんでくれよ。デリバリーちゃうやろ!デリケートやろって。」

何なんだ!?コイツわ!?期待の目で俺を見るなよ。

ツッコミ役になる気も取り合う気もないけど相手の性格を把握してない時の対処法はバイト先の先輩に教えてもらった。

「俺、真楠くんみたいに笑いのセンスないからごめんな。」

おだてて謝る。これが一番。相手も悪い気はしないからだ。

「自分で言うのも何だけど俺もそう思う。」

したり顔で言い切る真楠に俺の方が恥ずかしくなる。

「まぁ、俺とツルんでたらその内、ツッコミも上手くなるぜ。」

お笑い芸人目指すつもりもツルむつもりもない。ってキッパリ言えれば良いんだけど余計なこと言って怒らせたくないので話をかえた。

「俺は二階だけど真楠くんの部屋は何階?」

「部屋は一階。それと俺のことはマックスで良いぜ。」

マックス?ああ、まくすだからか。

「マックス。寮内のこと教えてくれ。」

「良いぜ。事務局は玄関の横。風呂は一階の奥。トイレは各階にあるけど三階から上は誰も使ってないんだ。元々、少人数だし寮に入る奴は遠方か親の事情とか…亜樹ちゃんは何でこの時期に来たんだ?」

「俺は…えっと…両親が亡くなって身よりもなくて…だから寮がある学校に転校した…って感じ。」

本当のことは言えないから適当に誤魔化した。

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あきゅろす。
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