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色彩繚乱


「ハクの浄化により恭弥は闇を取り除かれ凄惨な記憶は消去されました。彩王と赤子は精霊王に連れ去られ私達はフランの開いたゲートで妖精界に赴き彩王と再会しました。無事な姿を目前にして安堵したのも束の間。彩王は私に赤子を見せアキが生んだ子だと突拍子もないことを言い出したのです。恐らく浄化の後遺症で記憶の混濁と希薄化が…」

ガチャと扉が開く音に振り返るとサイが居た。

「サ、サイ…っ!!」

いきなり抱きすくめられ心臓が飛び跳ねた。

「アキ、身体は平気か?」

身体…ああ、俺、出産したことになってるんだっけ。やっとサイに会えて嬉しいのに話の途中だったから…

「う、うん…平気。」

としか言えない〜っ!

「彩王、アキは男性でも黒曜石は生命を生む石、故に身ごもったんですよね?彩王の記憶の中には恭弥という人物は存在しないんですよね?」

恭弥がいない!?じゃ、恭弥との思い出は全くないってこと?

「ったくしつこいぞ。何度も言わせるな。浄化の影響で記憶力まで悪くなったのか?」

俺から腕を離すと眉を顰めた。

「そうではありませんが一応、確認の為です。」

苦笑いしながらコウは俺にアイコンタクトした。『これで解りましたよね?』って。俺は瞬きで答えた。恭弥の記憶を消した時点でサイの記憶も消えたんだろう。

「彩王、妖精王との話し合いは終わったの?」

ソウが赤子を胸に抱き俺とサイの前にやって来た。

「ああ、デカい借りを作ってしまったが浄化装置とやらを設置次第、龍国の民を眠りから解放すると約束した。何もかもハクのお陰だ。」

「…うん…だね。」

寂しげな顔をして睫毛を伏せた。ソウだけが覚醒したハクと会えず仕舞いだった。こんなことになるから記憶を呼びますのは後回しにすれば良かった。

「ソウ…ごめ…」

「ソウ、龍力が足りなかったか?」

サイ、気付いてないのか? 

「あ、ううん、彩王がくれた龍力で十分だよ。ありがと。」

無理に笑わなくても良いのに…

「ソウ…」

申し訳ない気持ちで一杯になった。

「アキ、そんな顔しないで。誰も予想出来なかったんだから。」

ソウはサイに気を使って言わなかったんだろうな。

「それより彩王と2人きりになりたいだろ?僕らは退散する…」

「ふぇ…ふぇえ〜ん。」

急に赤子がぐずりだした。顔をしわくちゃにして口をへの字に曲げて。

「お腹、空いたのかな?」

「おしめは先程、替えたので、そうかもしれませんね。」

ソウとコウが俺をジーっと見た。なっ、何でこっち見るのかな?

「アキ、乳をやってくれ。」

「っ!?」

んなもん出るわけないっしょ!!

「ぎ、牛乳とか粉ミルクで良いんじゃない?」

「お前は自分の子に粗末な物を与える気か?」

そりゃあ、出るものならやるけどさぁ、俺、男だし胸だってぺったんこだし。

「そうだ、アキ、ミルクより精液が良いんじゃない?」

え゛ぇ!?

「赤子に銜えさせるつもりですか?」

コウまで何、真面目な顔して言ってんだ!?可笑しいだろ!!

「幾らアキのが小さいからとはいえ赤子の口に入らないだろう。」

おい、こら、しれっと失礼なこと言うな!俺のは標準サイズだっつうの!


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