色彩繚乱
5
「サ…っ!?」
突然、ソウが覆い被ってきてバランスを崩しそうになったけど、何とか両足で踏ん張った。
「あ、あぶっな…い゛っ!!」
肋骨が軋むくらいギュギュ抱き締められ痛みと息苦しさで背中を叩いた。
「ソ、ソウ…た、たんま、くるしっ…」
「あ、ごめん!」
慌てて離れるとソウは「嬉しくて、つい…」と照れ笑いした。気持ちは解るけど…
「突進してきたら危ないだろ?」
「えへへ…」
舌出しウインク&両手を合わせる仕草はお茶目で、おでこを指で軽く押してから改めて胸に抱くとソウも抱き返した。
「…無事で良かった。」
「アキぃ…会いたかったよぉ。」
甘えた声で子供みたいに安心しきった顔をする。俺は母親になった気分でソウの頭を撫でた。
「よしよし…」
「アキ、目覚めたんですね。」
ソウの背後からコウが微笑んだ。良かった。コウも無事だったん…っ!?
「コ、コウ、それ…」
抱っこしている赤子が俺を見詰めて破顔一笑した。か、可愛い!ってそうじゃないだろ!!
「捨てるわけにもいかないので…」
「捨てるとか言うなよ!
可哀想だろ!」
コウから赤ちゃんを奪うとソウは「僕が…お兄ちゃんが守ってあげるからね。」と赤子に微笑みかけた。髪は薄茶色でも目鼻立ちはどことなくサイに似てる。
「サ、サイは…どう…思って…るんだ?サイは何処に?」
唐突すぎて声が震える。心の準備をする時間がなくて頭が追い付かない。
「彩王は妖精王と会談中です。赤子はアキと自分の間に出来た子だと思ってます。」
「えっ…」
思いも寄らない返答は俺を混乱させた。
俺とサイの子?何、言って…
コウはソウに目配せするとソウは俺達から離れ天蓋ベットに腰を下ろした。赤子に聞かせたくなかったのか…それとも…
「アキ、落ち着いて聞いてください。」
「お、落ち着け?この状況で?」
コウだって複雑な顔してんのに、俺がこんなに動揺してるのに…
「困惑するのも解ります。私も状況を整理するのに時間が掛かりました。ですが、私の話を聞いてください。彩王が会談を終えて帰って来る前に…」
「わ、解った。」
彩王と話が噛み合わないと不味いよな。
「とりあえず深呼吸するから待って。」
ただの気休めだ。きっと聞いたら平静でいられない。でもしないよりはマシだろう。
「す〜、はぁ〜っ。」
何を言われても取り乱さないようにしなきゃ…卒倒してしまう。
「す〜〜、はぁ〜〜っ。」
最後に大きく息を吸って吐いた。よし!!
「良いよ。話して。」
意を決して聞く態勢に入った。狼狽えない自信はないけど聞くのは怖いけど…聞かないという選択肢はないんだ。
「では最初から…アキはハクの最後をご存知ですか?」
「ああ、フランから聞いた。浄化装置のこともコウが辛い役目を果たしたことも。」
思い出したのかコウの表情が暗くなった。だけどほんの少しで直ぐに表情は戻り語り始めた。
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