色彩繚乱
3
『アキ、解ってるだろう?』
その声は黒曜石…
『白龍石が感情を持てば途方もない闇の中で、もがき苦しみながら浄化しなければならない。それでも白龍石に浄化をさせるのか?』
…そんな惨いことハクにさせられない。
『選択したのは白龍石。私は常に中立の立場。だがアキの望みを叶え彩龍石は作り替えず魔物を人に変えた。何故ならアキは私の半身。共鳴する前なら引き離されても消えるのはアキのみだったが今となっては私も同等。しかしアキの要望を全て叶えるわけではない。このイレギュラーな事態に終止符を打つ為だ。』
黒曜石と繋がって以前より身近に感じる。口調も余所余所しさがなくなった。口数も多い。俺が息絶えれば黒曜石も消滅するかもしれない。そうなれば龍国が闇に包まれ戦争や虐殺が始まる。龍人は元より負の感情を抱きやすく陰湿で恨みがましい種族。故に光を求め陽を欲し心の平穏を望み何千年も天に祈った。そして人々の願いは具現化した。それが黒曜石だ。
『悲嘆に飲まれると意識が切れる。彩龍石に会いたいならば感情的になるな。白龍石は自ら選び自己を尊重したのだから。』
ああ…ハクは覚悟して後悔も未練もなく逝った。だけど俺はハクに会いたかった。抱き締めて言葉を交わしたかった。この手にハクの温もりを感じたかった。ただ、それが心残りなんだ。
「黒曜石、しっかりしてください!」
はっ!!
フランの声に意識を外に向けた。
「あ、ああ。大丈夫だよ。」
俺は涙を袖で拭き気持ちを落ち着かせた。ヤバかった。危うく気絶するとこだった。
「…ショックが大きすぎましたよね。でもこれだけは聞いてください。浄化装置が完成したんです。後は蛋白石を嵌め込めば直ぐにでも浄化出来ます。」
「完成って…もぅ、出来たのか?」
「人間界とこちらの世界では時間の流れが異なるので人間界の1日はこちらの10分です。」
そんなに差があるんだ。ということは俺が気を失っていた時間…仮に5時間としたらもぅ、30日も経ってるのか…
「…かなり経ったんだな。俺にとって数時間前のことでも。」
実感が湧かなかったけど
寂しそうな表情をするフランに目を見張った。コイツでもこんな顔するんだ。あっ…目尻が濡れて…そういえば涙声だった。ハクを偲び悲しんでくれてる。ハクがコイツを信用して龍国を任せたのなら俺も協力は惜しまない。
「フラン、蛋白石がいるんだよな?」
「あ、はい。」
「龍国の鉱山にあるから好きなだけ持って行くと良い。場所は…」
「調査済みです。無断で採掘するわけにはいかないので。」
へぇ…意外と常識はあるんだ。コイツのことだから勝手に採って浄化装置をドヤ顔で持ってくると思っていたけど。
「じゃ、頼むよ。」
笑って言うとフランは照れくさそうに頬を微かに染めた。そのあと頭を深く下げ「あの時はごめんなさい。」と謝った。コイツも妖精王の命には従うしかなかったんだろう。俺も同じだ。黒曜石には逆らえない。
「お互い辛い立場だよな。」
「えっ?」
弾かれたように顔を上げ俺を見上げた。
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