色彩繚乱
11
「どうせ俺に拒否権も選択権もないんだろ?なら寮に入る。」
入寮したら横で暮らさなくて良いし顔を合わせるのも校内だけだし勉強より働きたいけど無理だし。
「寮…ですか?」
俺の提案にコウが目を見開いた。
「うん。で、マンションは引き払う。そしたら家賃、払わなくて済む…」
「許さん!!」
サイの一喝に俺は勿論、コウ達もビクッとした。
「俺の目の届かない所に行かせられるか。家賃は俺が支払ってやる。」
「やるだって?アンタ、何様だよ?俺の面倒は俺がみる。アンタの世話になんかなるもんか!」
「俺に向かってよくも…生意気な口を…」
底冷えしそうな眼光にゾッとした。や、やばい。これはやばいぞ。謝らないと…
「ご、ごめ…」
謝り掛けたけど此処で謝ったら俺はもぅ反抗できなくなる。束縛され自由を奪われ籠の中の鳥になってしまう。それじゃ生きていても死んでるのと一緒だ。親より長く生きて幸せな家庭を築こうって思ってた…なのに…
「…っう…」
泣きたくないのに…コイツの前で涙なんか見せたくないのに…とめどなく溢れて両手で顔を隠した。
「亜樹…」
コウが俺の背中をさすってくれた。でも味方にはなってくれない。誰も…
「彩王、亜樹にゃが可哀想にゃ。そんなに気になるなら僕、ソウと合体して寮に付いて行くにゃ。」
「えっ!?」
「儂も!だからアキの望みを叶えてやってくれ!」
「お前ら…っ俺の為に…」
物で釣っておいて良かった。
「彩王、私からもお願いします。寮の方は何とかしますから。」
「…コウ。」
まさかコウが味方してくれるなんて…ちよっと感動。
「貴様ら…」
俺達を見るサイの顔が怖かったけど怯むことなく見返した。俺には味方がいるんだ。
「勝手にしろ。」
吐き捨てるように言いサイは姿を消した。
「や、やった…やったぜ!」
初めて自分の意見が通ったことにガッツポーズを取った。
「良かったですね。」
「にゃん。」
「うむ。」
3人が喜んでくれるから俺も笑顔で礼を告げた。
「ありがとう。皆のお蔭だよ。」
「いいえ。我等は彩王の一部。口ではああ言っても本心は亜樹に嫌われたくないんですよ。」
「そう…なのかな?」
そんな風には全然、見えなかったけど。
「ではソウ、アオイ融合してください。」
「うむ。」
「はいにゃん。」
2人は向き合うと両手を重ねた。刹那、光が2人を包んだ。
眩しい…見てられない。
顔を背け待っていたら、いきなり抱きつかれた。
「うわっ!?」
「亜樹〜!!」
俺に笑いかける少年はサイを幼くしたような顔立ちだった。
「君が蒼龍?」
「そうだよ。これが本来の僕の姿。どう?」
人差し指を頬に当てウインクする。蒼い瞳と長い蒼髪。透けるような白い肌。背丈は俺と同じくらい。
「どうって…サイより可愛げがあって綺麗なコウより可愛い。総合すると可愛らしい…かな。」
「亜樹も可愛いくて綺麗だよ。僕、亜樹、だぁい好き。」
チュッと唇にキスされて吃驚した。
「ソウ、狡いですよ。私だって唇はまだなのに。」
「こういうのは早いもん勝ちなんだよ。ねぇ?」
ねぇって同意を求められても…てか、ソウって手が早い?
「亜樹、私にも口付けしてください。」
背を屈め目を閉じキスを待つコウに感謝の気持ちを込めて軽く唇を合わせた。
「やはり彩王から受ける感触よりリアルですね。」
口唇をなぞりながら目を細めた。
「コウ達ってサイと感触まで共有してんの?」
「ええ。五感もですよ。では入寮の手続きとマンションの解約をしてきます。夕方までに準備を済ませておいてください。」
「夕方までに準備?」
「彩王の気が変わらぬ内に事を済ませておきたいのです。」
「ああ、そうだな。うん。解った。」
「じゃね。亜樹。」
2人が姿を消した後、入寮の準備をした。
「寮かぁ…どんな所だろう。」
初めての寮暮らしを想像したら少しだけテンションが上がった。
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