色彩繚乱
10
「俺とお前の間に約束なんぞ成立しない。」
「しかし私はアナタの抑止力。従って誓約は必要なのです。」
「ちっ。」
不愉快げに舌打ちするサイにコウは困り顔で笑い俺に視線を移すと微笑んだ。
はぁ…助かった。コウが間に入ってくれなかったらどうなってたやら。
「それで手続きは終わったのか?」
「はい。完了しました。ですが亜樹に説明してないでしょう?」
「ならばお前が言い聞かせろ。」
言い捨てるとドアに凭れて腕組みをした。
「なんだよ!その態度!マジ、ムカつく!」
「申し訳ありません。彩王のかわりにお詫びします。私は全然、悪くないのですが。」
チラリと見るとサイは顰めっ面をした。コウが謝ってるのに!謝るのはお前だっ!と言いたいのを我慢した。コウの面子を潰したくないからだ。
「怒るのも無理ありません。理由をお話しします。よく聞いてください。」
俺の怒りを静めるように優しく言うコウに俺は仕方なく頷いた。
「ありがとうございます。まずは月葦学園について…」
コウの話を聞いて事情は解った。
「サイがお目付役で月葦に行くのは良いとして何で俺まで月葦に行くんだ?」
「それは亜樹と一緒に居たいからです。」
「はぁっ!?一緒に居たい?サイが俺と?なんで?」
「お前は俺のだからだ。」
「俺のだから一緒にいる?何?それ?わけ解んない。」
「一々、口答えするな。」
「解るように言わないからだろ?」
俺達の会話を聞いていたコウが突然、笑い出した。
「何、笑ってんの?」
「亜樹の鈍さと彩王の口下手につい…すいません。」
俺って鈍いのか?
「彩王はアナタが傍に居ないと心配で仕方ないのです。」
心配?コイツが?
じっと見詰めると目を反らされた。
「コウ、口が過ぎるぞ。」
「失礼しました。」
ウソだろ?否定しないのか?
動揺する俺にコウは微笑した。
「兎に角、月葦学園の手続きはしましたので彩王と共に学園に行ってくださいね。」
「はぁっ!?俺の返事も聞かずにか?信じらんねーっ!」
「彩王が急がせるもので事前にお知らせ出来なくて申し訳ありません。」
「謝られても困る。俺が高校生になれるわけないだろ?」
「ご心配なく。教員及び事務員に暗示を掛けましたから。」
「暗示!?」
「ええ。力を使えば造作も無いこと。この意味が解りますよね?不可能を可能する。即ち出来ないことなどないのです。」
人智を超えた力。人間を意のままに操り支配する。俺1人、抗ったところでどうにもならないってことか。あぁ…一難去ってまた一難。何でこんな目に合うんだよ。打開策はなくとも妥協案くらいは…うーん…うーん…おっ!?閃いた!!
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