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色彩繚乱
14
「あぁっ…」

愛李栖…愛李栖…

「うおぉーっ!!」

やり場のない悲しみの咆哮は床を揺らし壁に亀裂を走らせ建物全体を軋ませた。感情が抑えられない。力の放出を止められない。

「彩王!!気を鎮めて下さい!!このままでは城は愚か国が崩壊します!!」

コウの叫び声は俺の脳を振動させ暴走寸前の龍力を抑制したが体内に集められた力は放出しないと自身で消化出来ない。

「うぅ…」

『コウ、どうすれば良いか教えてくれ?』

目で訴えるとコウは焦り顔のまま頷いた。

「意識を龍力に集中して蓄積した力を天に向け放ってください。」

天なら被害は最小限に抑えられる。コウの助言に従い精神力で滞った龍力を統一し天井目掛けて放出した。

「はぁ、はぁ…」

解き放った力は雲を切り裂き空中で弾けた。

た、助かった…大惨事にならなくて…

安堵感と脱力感に気を失い次に目覚めた時には翌日になっていた。昨日のことが夢なら…と切に願ったが柩を目の当たりして淡い期待は脆くも崩れた。床一面に敷き詰めた白い花はユキの好きな花な花だった。俺が散策に連れ出さなければ…俺が矢を回避出来ていれば…

「彩王、己を責めるのは止めてください。起きてしまったことを悔いても仕方がないでしょう?」

至って平静なコウに思わずカッとなった。

「お前に何が解る!?俺が初めて心から愛した者がこの世を去ったのだ!平然としてられるか!」

声を荒げ睨み付けるとコウは深い溜め息を吐いた。

「解らないとでも思ってるんですか?私は貴方の一部ですよ?悲しくないわけないでしょう?」

「そうだよ。僕も気持ちは彩王と一緒。悲しくて…辛くて…胸が痛くて…」

言いながら泣き崩れるソウをハクは無言で抱き締め嗚咽した。皆の嘆きが俺に流れ込み押し潰されそうになった。重い…苦しい…どうにかなりそうだ。

「お気持ちは十分、理解していますが、その感情表に出してはなりません。国が崩壊してしまいます。」

懸命に守護した結果がこれではやりきれない。愛李栖の居ない世界なんざ、どうなっても構わない。悲しみは次第に憤りに変わっていった。

「はっ。こんな国、滅亡してしまえば良い。」

「彩王!?気が触れたのですか?」

「狂っているのはこの世界だ。俺から愛李栖を奪い子を奪った。消滅しようが俺の知ったことではない。」

言い放つと平手が飛んできた。

「き、貴様…俺に手を上げたな?龍王の俺に…」

「それが何か?私は貴方のストッパー役。当たり前のことをしただけです。」

抑揚のない声音と冷めた表情は俺を苛つかせ怒りの矛先をコウに向けた。

「赦さん、赦さんぞ!!貴様の首、落としてやる!!」

「黙れ!!戯け者!!愛李栖の母や弟を見殺しにするのか!?」

「っ!?」

「国1つ治められないとは最早、王ではないわ!!恥を知れ!!」

怒声を発し凄まじい気迫で俺は俺を怯ませ戦意を消失させた。冷静沈着で常に従順なコウが憤怒している、

「お前の言うとおり俺は王、失格だ。」

感情的になり愛李栖の身内や民を顧みずコウに八つ当たりした。

「…済まない。」

「…いえ。私の方こそ彩王に対して暴言、非礼、申し訳ございません。」

土下座するコウを抱き寄せた。

「お前は正しい。俺は最低だ。」

威光、厳格、威厳、全てを兼ね備え誉れ高い王と称えられた俺が此処まで落ちるぐらい愛李栖の存在は大きく喪失感にとめどなく涙が溢れた。

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