色彩繚乱
9
起き抜けに3人から弄ばれ疲れは取れないまま今日の始まり。最悪だ。
「いててっ…」
腰とアソコの痛みと異物感に堪えながらパジャマを脱ぎジーンズとパーカーに着替えた。サイは椅子に腰掛け腕組み。子供達は無邪気に俺の部屋を物色中。引っ越してきたばかりだからダンボールやら衣装ケースやら散らかっている。早く整理したいけどこの部屋で暮らすのは嫌だから不動産屋に行って相談しよう。もしかしたら別の物件を格安で紹介してくれるかもしれないし。
「アキにゃ〜、これ下さいにゃ〜」
アオイがゲーセンで取った猫のぬいぐるみを見せた。
「いいよ。あげる。」
「うにぁ〜嬉しいにぁ〜」
ぬいぐるみにスリスリしてる。キャッチするのに時間掛かったけど。
「アキ、これ!儂にくれっ!これが良い!」
今度はソウがハト型のオカリナを持ってきた。
「吹けるのか?」
「バカにするでない!これぐらい容易いわ!」
『ピーっ!プーっ!ピー!』
騒音に俺は耳を塞いだ。息、吹き込みすぎ!顔、真っ赤にして吹くもんじゃあないのに。
「ソウ、うるさいにゃ〜」
アオイが止めさせようとしたらサイがオカリナを取り上げた。
バギっ!
あ!コイツ、俺のオカリナ壊しやがった!
「喧しい!」
「ああーっ!?儂の…儂の笛が…うわーん!」
いや、それ、俺のだから。けっこう高かったのに。お土産だけど。
「うぇーん…えーん…」
「ヨシヨシ。泣くなよ?ほら、ハトの縫いぐるみやるから。」
ソウはハトを口にした。
『…ーっ…っ!!?』
「お、音が出ぬ…びぇーぇーん!」
「ああ、お腹を押したら鳴るよ。」
『ぴぷーっぴぷーっ』
「ほんとじゃ…。」
ほっ。漸く泣きやんだ。ったく自分の眷属を泣かせてどうすんだよ?
「用が済んだんならさっさと2人を連れて帰れよ。」
鍵と携帯をポケットに入れて部屋から出ようとするとサイが俺の腕を掴んだ。
「な、何だよ?」
黙ったまま俺を威圧をする。でも弱気になれば付け込まれるので虚勢を張った。
「気安く触んな。俺は行くとこがあるんだ。」
力任せに振り解き睨み付けた。
「何処に行く?」
「何処に行こうと俺の勝手だ。」
「言ったはずだ。お前は俺のモノ。勝手は許さん。」
ムカッ!!
「言っとくけど俺は物じゃない。俺には俺の生活がある。働いて1人でも生きていけるよう蓄えなきゃなんないんだよ。俺の身辺調べたんなら解るだろ?」
「働く必要はない。お前は月葦学園に編入するんだ。」
月葦学園?どういうことだ?
「アンタの言ってることが全然、理解できない。」
「黙って俺の言うことに従え。」
命令口調が癇に触った。
理由も話さず従え?冗談じゃない。
「俺の気持ちを無視すんな!!アンタなんかの言いなりになるもんか!!」
「言うことはそれだけか?」
冷え冷えした片目が俺を怖じ気させる。くそっ!負けるな!俺!
「アンタが…」
「アンタではない。サイと呼べ。」
俺の胸倉を掴んで正面から見据えた。
「な、殴るのか?」
「殴られたいのか?」
拳を目の前に突き付けられ思わず目を瞑った。
「彩王、手荒な真似はしないと約束したでしょう?」
えっ?
片目を開けるとコウがサイの拳を包んで苦笑していた。
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