色彩繚乱
11
「ぐはっ!!」
突然のことに防御出来ず強か背中を打ち、激痛に顔を顰めるとせせら笑いが聞こえた。
この声…溝口じゃない…誰だ?!
見上げた先に子供が腕組みをしていた。
「お、お前は…」
「おっと、何者だ?って言うなよな。すっげぇムカつくから。」
眼帯をした子供は長い髪を掻き上げると俺に近づいて来た。黒いオーラを放出させながら一歩、また一歩と距離を縮める。室内に充満する重苦しい空気と威圧感は俺を戦慄かせ、どうしてこんなにも恐れるのか俺自身に驚愕した。
「ビビんなよ。俺様もお前の一部なんだぜ?」
俺の一部…まさか…いや、そんなはずは…
「ちっ。狼狽えやがって。痛めつけて嬲ってやろうと思ったが、これじゃ、埒が明かねぇよなぁ〜。」
溝口を一瞥すると溝口は苦笑いした。
「いささか急ではありますが直接、体内に闇力を注入すれば良いでしょう。奥底に眠った闇の記憶が誘発されるはず。」
「へぇ〜、そりゃあ、楽しみだ。お前もそう思うだろ?」
俺を見据える片目は黒く深く闇の底に引きずり込まれそうで顔を背けると顎を掴まれた。
「反らすんじゃねぇよ。」
深闇の目で射抜かれ身動きが取れずせめてもの抵抗で目を伏せると鼻で笑った。
「つまんねぇなぁ。もっと手こずらせてくんなきゃ、面白くねぇだろ?」
「くっ…」
生意気な口を叩きやがって…俺に力があれば…
「おっ、良いねぇ。その悔しげな面。だが、これからもっと歪めることになるぜ。」
まだ何かするつもりなのか!?
「この日をどんなに待ちわびたことか。長い年月を経て蘇ったというのに…忘れられた者の遺恨を…存在を認められず無いものとされた屈辱を…漸く晴らせる時が来た。」
俺に向ける目は憎しみに満ちていて困惑した。俺はコイツを知らない。故に憎まれるようなことはしていない。
「思い違いするな。俺は無関係だ。」
「はっ、思い違い?無関係?ふざけたこと抜かしやがって。口から心臓を取り出して握り潰してやりたいところだが俺様に懺悔するまで殺さない。」
顎を掴んだまま俺の右胸に手を当てた。
「此処にたっぷり注ぎ込んでやるから己の闇と向き合え。」
包帯の隙間からジワジワと傷口に染み込んでいく。身の毛もよだつ悪意…憎悪…怨念が毒のように全身に回り身悶えた。
「うぅ…あぁっ…」
「苦しいか?痛いか?しかし、それはお前自身が生み出したものだ。」
俺が持っていた感情だと言うのか?嘘だ…俺は黒曜石の半身、その俺が邪心を持つわけが…
ドクン!!
「あ゛ぁ…」
何かが内側からこじ開けようとしている。
「や、止めろ…」
カタカタと音を立てて這い出ようとする。
「で、出てくるな…」
必死で押し留めていると片手を両手にして「往生際の悪い奴め!引導を渡してやるから受け取れ!」と言い放った。刹那、凄まじい邪気が俺の中に流れ込んできた。
「あ゛ぁあーっ!!」
押さえていたものが深淵の底から飛び出し俺に覆い被さった。耐え難い苦痛と処理しきれない感情は皮膚を破り肉を喰い骨を砕き俺をバラバラにした。
散らばる俺の肉片。まるでパズルのピースだ。
散らばった小片は新たな枠に嵌められた。しかし欠けた部分があった。これを埋めなければ俺は完成しない。無くした欠片を探す為に時を遡っていった。
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