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色彩繚乱

此処まで虚仮にされたのは初めてだ。一発、ぶん殴ぐらないと気がおさまらない。拳を握り締めた瞬間、ソウが俺の腕を掴んだ。

『彩王、落ち着いて。僕も同じ気持ちだよ。でもフランはダメ。フランを殴ったら妖精王はアキに酷いことするかもしれない。僕らに報復するより効果的だし彩王にダメージ与えられる。』

ソウの思念は俺を我に返らせた。フランを目の中に入れても痛くないハイネスが激昂したら何をするか解らない。俺の胸で眠るアキに危害が及ぶ可能性は非常に高い。

「キング?」

その横っ面、張り倒してやりたいが…

「…経緯は解った。俺達に手を貸してくれるんだろうな?」

此処に来た理由はそれしか考えられないからだ。しかしフランは俯いた。

「おい、黙ってないで答えろ!」

苛立ちにテーブルを叩くとビクつきながら口を開いた。

「と、当初は…キング達を龍国に戻す手助けをするつもりでした。龍国の闇が妖精国に蔓延すれば妖精は息絶え精霊は住処を失い消滅するからです。今は精霊と妖精達の加護の下、龍国の民は眠りについています。幸せな夢をみながら…」

転生に失敗した俺の尻拭いをしてくれたのか。ハイネスに感謝しなくてはならんな。

「…ですが状況が変わりました。闇龍石を浄化して頂かないと帰郷は叶いません。」

「っ!?」

コイツも幻を見たのか!?

「何、言ってんだよ!?闇龍石なんてあるわけないだろ?変なこと言うな。」

「プリンスも記憶を無くしているんですね。これを飲んでみれば私が嘘を言ってないと解るでしょう。」

コートから小瓶を出してテーブルに置いた。

「そんな怪しいもん、飲めないよ。」

そっぽを向くとフランは苦笑した。

「ご心配無用です。落下の際、記憶喪失になっているかもしれないとダッドから預かった物です。」

ハイネスの調合した物ならば危険性はないだろう。だがどうしてか踏ん切りがつかない。

「彩王、どうする?」

躊躇する俺にソウは不安顔で俺の返答を待っている。嘘か真か確かめないと…

「怖いんですか?」

怖い?この俺が?

「はっ、俺に怖い物などない。」

「震えているようですが私の見間違いですか?」

言われて自分の手を見ると指が小刻みに震えていた。

「ば、馬鹿な…」

意思に関係なく身体が拒絶しているのか!?

「彩王、顔が真っ青だよ?気が進まないなら止めた方が良いよ。」

しかし此処で臆すれば認めることになる。恐れなどないと証明しなければ…

震える指を握り深呼吸した。俺は翼龍王彩龍。我に一点の曇りなし。最強にして至高の王。恐れるな。怯むな。自分に暗示を掛け小瓶を手にし喉に流し込んだ。

「彩王、大丈夫?」

「問題ない。」

暫く待っていたが無味無臭の液体は俺にこれといった変化をもたらさなかった。拍子抜けも甚だしい。危惧していた自分を恥じつつも安堵した。

「何も起きないじゃないか!どういうことだよ?」

ソウがフランに詰め寄るとフランは深い溜め息を吐いた。


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