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色彩繚乱

額に掛かる艶やかな黒髪を手で梳き青白い頬に影を落とす長い睫を指でなぞり、血色を無くし青紫色の唇に口付けした。しかし体温を感じられず、辛うじて心臓が動いている状態。本当に目覚めるのか?と焦りコウに助言を求めた。

「コウ、何か手立てはないのか?」

さっきまでと打って変わり疲労しきった面持ちで溜め息を吐いた。

「…黒曜石に何度となく呼び掛けましたが応答がありません。アキはまだ覚醒してないので危機感を覚えた黒曜石がアキの覚醒を促して…」

話の途中でよろめきソウが慌ててコウを支えたが「…後を…頼みます…」と告げ龍石に戻ってしまった。龍化は力の消費が激しい。故に余程のことが無い限り変化しない。

「…それほど恭弥は強敵だったのか。」

不憫な境遇を乗り越えたお前がよもや魔に身を投じようとは。一体、何があったというんだ?コウの戯言を真に受けるわけにはいかないが、なにわともわれ不可解なことが多すぎる。

「あ、後は頼むって…こんな時に…どうしよう…」

紅龍石を手のひらに乗せたまま狼狽えるソウに「結界を張れるか?」と尋ねたら首を横に振った。

「僕は聖剣だよ?コウみたいな能力があったら僕に任せてって胸を張ってるって。」

やはり無理か。こうなることが解っていれば策を講じたものを。頼みの綱のコウはアキが目覚めるまで力を得られない。

「…マズいな。」

奴らの侵入を防ぐ結界はコウが張ったもの。結界が消えた今、襲撃される恐れがある。そうなれば俺とソウでアキを守れるだろうか?

「ハクがいたら心強かったのに…」

コウは白旺白夜が白龍石の可能性があると踏んでいたが確かめる前に事態は急変してしまった。

「仕方あるまい。我らは互いを認識していなければ意志の疎通も力も発揮出来ない。諦めろ。」

「…うん。」

肩を落とすソウに気休めの言葉さえ思い付かない。俺の頭の中はアキを安全な場所に移すことのみ。だが、その場所が見つからない。九重の所有物件は既に目を付けられているだろうしホテルは人間が多すぎる。どうしたものかと考えあぐねていると突然、リビングのドアが勢い良く開き真楠未来が入って来た。

「な、何故、お前が…」

驚きに目を見張る俺に「事情は後回しだ。一刻も早く逃げてくれ。」と告げた。

「説明もなしに従うとでも思っているのか?」

睨むとソウが「そうだよ!無断で入って来て逃げろってどういうことだよ!」と喚いた。

「怒るなって。壊した鍵は弁償する。説明も後でする。」

「お前は仲間か?溝口は無関係か?俺達を逃がす目的はなんだ?」

疑問を投げ掛けると真楠は顔を顰めた。

「アイツは…溝口は俺を出し抜いた。恭弥を闘わせるなんて話、聞いてねぇし。ムカついたから邪魔してやろうと教えにやって来た。」

案の定、溝口が親玉か。コイツは恭弥が魔物になった理由を知ってるのかもしれない。

「お前の言う通りにすれば俺の質問に答えるか?」

「俺が知ってることなら。」

「それで良い。約束を違えるな。ソウ、瞬間移動するぞ。」

「何処に?」

「とりあえず、俺の別荘だ。真楠、時間稼ぎしてくれるんだろうな?」

「アンタの別荘を最後に回すぐらいなら出来る。ま、俺を信用してくれればだけど。」

最悪の状況でなければ断じて信用しない。しかし他に打つ手がないのも確か。不本意だが真楠に別荘の住所を教え瞬間移動した。

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