色彩繚乱
1彩龍視点
(彩龍視点)
「…アキ。」
瞼を開けてその漆黒の瞳で俺を見詰めてくれ。
出会った時のように。
九重のシステムがハッキングされたと連絡を受けセキュリティーセンターに駆け付けた。騒然とする連中を叱咤激励して復旧作業に没頭。それでも半日、かかり急いでマンションに帰るとアキはベットに横たわり傍らでソウは号泣、コウは力無くうなだれていた。俺は状況を把握出来ず茫然としていた。するとコウが徐に土下座した。
「申し訳ございません。予期せぬ事態が起こりアキを守ることが出来ませんでした。奴ごときに手間取るとは…己の無力さに私は自分が許せない。」
屈辱に肩を震わせるコウの肩を掴んだ。コウを手こずらせた相手…溝口か?それとも新手か?
「何があったか説明しろ。」
一呼吸、置いた後、コウは事細かく話した。その内容は驚くべきものだった。アンドロイドに魔物化した恭弥。張り巡らせた結界。ハッキングは俺を足止めさせる為だったか。くそっ。こんな芸当が出来るのは溝口しかいない。そう確信していたがコウは思いも寄らぬ言葉を告げた。
「全ては闇龍石の仕業です。」
「闇龍石だと?龍石は俺を含め四つしか存在しない。お前も知っているだろうが。」
「闇龍石に関しては私より彩王、アナタの方がご存知のはず。」
「俺が?」
「はい。」
真っ向から見据える瞳に思わず視線を外した。何故、そうしたのか自分でも解らない。俺に後ろ暗いことでもあるというのか?はっ、馬鹿馬鹿しい。
視線を戻しコウの睨んだ。
「お前が知り得ることを俺が知らないなど有り得ない。仮に闇龍石が存在したとしてアキに何をした?」
「それは私にも解りません。恭弥と戦ってる最中突然、光が放たれ振り向くとアキが光に包まれ闇龍石は恭弥と共に消えました。」
「見間違いではないのか?龍化するとバーサーカー状態になり意識が混濁する。理性的なお前はその狭間で必死に理性を保とうとして…」
「幻を見たとでも言いたいのですか?」
不愉快な表情を露わにするがそれしか考えられない。
「そうだ。」
断言するとコウは拳を握った。
「殴るつもりか?」
「殴って目を覚まさせるのも一興かと。」
「冗談では済まされないぞ?」
「私は冗談は嫌いです。ご存知のはず。」
「この…減らず口め。」
怒りに拳を握り睨み合った。俺に手を上げるつもりならば容赦しない。
「彩王もコウもいい加減にしてよ!!アキが可哀想だろ!!アキを何とかしてよ!!」
ソウの悲痛な叫びにハッとした。そうだ。こんなことしてる場合じゃない。ベットの上で静かに眠るアキを抱き起こした。
「っ!?」
な、なんて冷たさだ。
「おい、アキ、起きろ!」
身体を揺さぶったが反応がない。まさかと思い手首を取って脈拍を確認すると脈があり、ひとまず安心した。
「アキは死なないよね?」
泣き腫らした顔面に不安を滲ませる。黒曜石が体内にある限り死にはしない。それに黒曜石に何かあれば俺達にも影響が出る。龍石ならば熟知しているだろうに。
「案ずるな。いずれ目を覚ます。」
「…うん。」
アキの冷えた身体を温める為に両腕で包んだ。
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