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色彩繚乱

このまま光に抱かれて眠りたい。微睡みながら…とその時、俺を包んでいた光が弾け地に落ちた。

「ってぇ…何なんだ?急に…」

高さがなかったから、あんま痛くなかったけど…

「ん?此処はどこだ?」

てっきり公園だと思っていた俺は驚き狼狽えた。何もない、何も聞こえない、だだっ広い空間。目を凝らしても見回しても境界線はなく救いは真っ暗闇じゃないってことだけだ。

「も、もしかして閉じ込められた?」

焦りと不安で闇雲に走ってみたけど行き止まることはなかった。

「つ、疲れた。」

無駄に体力を消耗してしまい自己嫌悪。兎に角、冷静にならなきゃ。嫌な感じも恐怖も感じないから闇の仕業じゃないのは明白だ。

「とはいっても扉も道具もないしなぁ。」

途方にくれ茫然としていると足元から姿見が出てきた。

「なんで鏡?」

脈略もなく唐突に出現した鏡をまじまじ見ているとキラッと光りサイとコウが映し出され思わず叫んだ。

「サイ!コウ!」

2人に俺の居所を知らせようと何度も鏡を叩いた。でも一向に気付いてくれなかった。

「くそっ。鏡越しじゃ無理なのか?俺が大変な時に変な服着て豪奢な部屋で寛いで…」
あれ?なんか、可笑しいぞ。

食い入るように鏡を見ると格好も部屋も中国風で日本じゃないみたいだった。ま、まさか龍国!?

「彩王、今夜は宮廷の晩餐会です。」

宮廷…やっぱり龍国だ。ということは過去の映像を見ているのか。

「…ああ。」

気のない返事をして頬杖を付くサイにコウは溜め息を吐いた。

「この時代の大臣や官僚共は我らを疎んじています。故に謀反を企てないよう監視する為の宴です。酒が入ると本音が聞けるやもしれませんので。」

「思量深い奴。案外、お前の方が王に向いてるかもな。」

「茶化さないで下さい。私は龍国を…」

「解った、解った。お前はこの国を愛してるんだろう。」

クスクス笑うサイに俺は瞠目した。こんな顔、するんだ。自然で滑らかな表情。そういえばコウが言ってたっけ。此処には俺の知らないサイがいる。

「…もぅ、結構。失礼します。」

眉間に皺を寄せ部屋から出て行った。コウは相変わらずでほっとした。

「やれやれ。気位の高い奴だ。」

椅子から立ち上がるとサイは窓辺に移動した。

「…平和だな。」

眼下に広がる都を眺め微笑む。サイも龍国が好きなんだ。ふと夢で見た光景を思い出した。

『滅しても構わない。』

サイにこんな言葉を言わせた何がこれから起こるんだ。闇が言ってた惨劇が…

「見るのが怖いな。」

呟くと鏡は何も映さなくなった。

「えぇっ!?なんで?」

俺が怖じ気づいたから?見たくないと一瞬、思ったから?

「過去を映す鏡…俺の心に反応する鏡…俺と鏡は繋がっている…」

おそらくこの鏡は俺の魂と同化した石、黒曜石。だとすると此処で拒絶したら俺は覚醒しないまま閉じ込められ二度とサイ達に会えないだろう。確信はないけどそうなる予感はある。

受け入れなきゃ。全てを。俺はサイと離れたくない。コウやソウと一緒に居たい。俺の掛け替えのない家族だから。

キラッ。

「あっ!?」

気持ちが通じたのか鏡は煌めくと今度はソウを映し出した。

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