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色彩繚乱

「な、何だよ?」

必死で釈明してんのに哀れむような笑い方しやがってムカつく。

「お前が不憫すぎて笑える。」

俺が不憫だと?それはお前だろ? 

眉根を寄せると鼻で笑った。

「記憶を無くしたお前に説明しても無駄だろうが転生に失敗したのは奴の心が弱かったせいだ。」

「え!?」

予想外の出来事じゃなかったのか?

「捕縛してから甚振って辱めて記憶を引きだそうと思ったが気が変わった。今から思い出させてやる。」

指をパチンと鳴らすとアイスが闇の腕の中に落ちてきた。

「なっ!?」

「コイツは白龍石が作った鉄くず。しかしながら、なかなかの出来映えだ。特に面構えはあの女を彷彿とさせる。記憶の片隅に残っていたのか無意識か…白龍石邸で目の当たりにした時は蘇ったのかと度肝を抜かれたぜ。」

闇の言葉は俺を驚愕させた。ハクと闇は接触していたなんて…

「ま、まさか…」

結託して俺を陥れる為に画策したのか!?

「おい、おい、悲愴な面すんなよ?まだまだこれからだぜ。」

アイスの顎を掴んで俺に向けた。フリーズ状態が続いているのかピクリともしない。

「アイス…」

鳳のマンションで闇に会わせるつもりだったのか?予定を早めたのは闇が痺れを切らしたからか?
解らない。ハクは俺に好意を持っていた。なのにどうして…

考えれば考えるほど疑念は募るけど心の片隅ではハクを信じたい気持ちがある。闇に侵されても俺達の味方だって…でも…

「っ!?」

突如、アイスの身体がふわりと浮いた。

「刮目していろ。そして思い出せ。惨劇を…ダークアロー!」

闇が空に向けて手を翳すと空中に黒い矢が出現し一瞬でアイスの胸を貫き赤い液体が俺の顔面に降り注いだ。それはまるで血液みたいに生暖かくて息を呑んだ。

「う、うさ…ぎ…さん…」

貫かれた衝撃で起動したのかアイスは俺を見下ろした。その瞳は悲しげに潤んでいて心臓が締め付けられるような感じがした。

な、何、この感覚…前にも…デジャヴ?

『サイ…』

耳の奥で声がした。その時、アイスの顔がぼやけ見覚えのある顔と重なった。

『もっと…一緒に…居たかった…』

「ア、愛李栖…」

無意識に呟いた名前に驚いた。愛李栖って誰だ?なんで俺、こんなに胸が苦しいんだ?

「もっと…アナタと…お話し…したかった…です。」

アイスの声と表情は聴覚と視覚を狂わせた。

「うぅ…」

耳鳴りがする。視界がグルグル回る。

「気持ち…悪い…」

立っていられなくて、しゃがみ込み両手で耳を塞ぎ目を閉じた。すると脳裏に此処ではない映像が浮かび上がった。2人が手を繋ぎ森の中を散策している。楽しそうに笑いながら。その時、何処からともなく矢が飛んできて彼女の胸に突き刺さった。

『愛李栖ーっ!!』

「愛李栖ーっ!!」

叫び声は俺の叫び声に変わった。

「はぁ、はぁ…」

か、彼女は俺の…

「かはっ!漸く思い出したか!」

闇の声に顔を上げるとアイスが上から落ちてきた。

「コイツは用済みだ。お前にくれてやる。」

ぐったりと横たわるアイスを捉えた瞬間、身体が燃えるように熱くなった。

「よ、よくも…こんな…惨いことを…」

悲しみ、嘆き、怒り、憎しみ、怨み…あらゆる負の感情が一点に集中し黒い炎になって腹から噴き出した。

「うぁああーっ!!」

身を切り裂くような痛みに悶え黒い炎が俺を燃やし肉が焦げたような臭いと煙が辺りに充満した。そして全てを出し尽くすとぽっかり空いた穴から眩い光が放たれ俺を包み込んだ。

あぁ…なんて温かいんだろう。

光は春の日だまりのように温かくて俺に安心感と心地よさを与えてくれた。

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