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色彩繚乱

「う、宇佐木、アイツ…ヤバくない?」

能力も関連もない雛形の本能が危機感を察知したのか血相を変え小刻みに震えた。

「あ、ああ。相当…ヤバい奴だ。」

夢で会った時も嫌な感じがしたけど実物は更に上をいく。闇が発する闇気のせいで空気は淀み冬なのに生暖かく息苦しい。おまけにベタベタ肌に張り付いて嫌悪感はハンパない。でもそれだけじゃない。目には見えないタール状のドロドロしたモノが足元から這い上がってくるような感触は虫唾が走る。

うぅっ…気持ち悪い…でも弱音を吐いたら奴の思う壺だ!

「お…おい、大丈夫か?真っ青だぞ?」

懸命に堪える俺を見て雛形は泣きそうな顔し闇は嘲笑った。

「くくっ…良い面だな。だが、これしきで音をあげるなよ?俺様を忘れた報い、存分に味合わせてやるから覚悟しろ。」

ニヤリと笑い片目で俺を脅す。どうしょう…サイもソウも助けに来られない。コウは苦戦中。自分で何とかしないと…って俺に何が出来る?無力で非力な俺に出来るのは逃げることだけ。それも闇相手じゃ無理だろう。ならばせめて雛形だけでも逃がさなきゃ…。俺は勇気を振り絞って口を動かした。

「ひ、雛形は…コイツは無関係だ。見逃してくれ。」

言葉だけで聞き入れてくれるほど甘い奴じゃないからプライドを捨てふらつきながら深々と頭を下げた。

「お前の友か?」

「ただの同級生だ。」

嘘は言ってない。雛形はハクの友達だ。

「ふん。まぁ、良いだろう。」

あっさり承諾するから拍子抜けした。頭を下げたのが幸を成したのか?それとも魂胆があるのか?真意は推し量れないけど兎に角、頭を上げ雛形に目配せした。

「い、良いのか?」

小さく頷くと雛形は申し訳ない顔をして「悪い。」と謝りアイスのもとに走って行った。

ほっ…良かった。あとは会話して少しでも時間を稼ぐ。もしかしたら助けに来てくれるかもしれない。俺は一縷の望みにかけた。

「お前の目的は俺を利用してこの世界を暗黒に変えるつもりか?」

乗ってくれることを祈りつつ尋ねた。

「はっ、お前が居なくとも混沌の闇に変えるなんざ造作もない。無論、殺すことも。だが簡単には殺さない。俺様を記憶から消し去ったお前らに同等の屈辱を与えてやる。」

つまり俺達を殺すことも世界を変えることも容易いけど忘れられままじゃ腹の虫が治まらないから仕返しするってことか。その気持ちは解らなくもない。学校生活で例えるならクラスメートに無視され続け卒業後、何年か経って同窓会に出席すると「お前、誰だっけ?」と誰一人覚えていなかった。過去にも未来にも自分を記憶している者はいない。それどころか存在すらしていない。それは惨めで遣りきれないだろう。まして闇は自尊心と自己顕示欲の塊。蔑ろにされて怒るのも無理はない。けどそれには理由があるんだ。

「誤解だ。お前を忘れたのは転生が上手く行かなくて落下の衝撃で記憶が飛んでしまって…だから悪気はないんだ。不測の事態が起こったんだ。仕様がなかったんだ。自分でも言い訳がましいのは解ってる。言い繕ったところでお前の心を動かせないのも解ってる。でもわざと忘れたんじゃないことだけは解って欲しい。」

俺なりに誠意を込めて一生懸命、説明すると闇は憫笑した。


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