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色彩繚乱

「アイスさんはこの近くに住んでるんですか?」

無難な質問をしたのに顎に手を当て考えるような仕草をした。

あれ?マズいこと聞いたかな?

「私は主に仕えてる身なので住んでいるというより住まわせて頂いています。」

ああ、そういうことね。

「じゃ職業は家政婦さん?」

「…ですね。宇佐木さんは学生さんですか?」

「はい、高校二年です。月葦に通ってます。」

嘘だけど嘘じゃない。事情は言えないけど。

「月葦ならお住まいはこの近くですか?」

「いえ、寮に入ってます。」

昨日はマンションに泊まるつもりじゃなかったから外泊届けは出してないけど多分、ソウが出してるはず…ってソウも類も遅いな。

「私は寮暮らしをしたことがないので想像もつきませんが楽しそうですね。」

サイが隣じゃなかったら悠々自適にマンションで暮らしてた。

「楽しくはないですが寮のご飯は美味しいですよ。アイスさんの得意料理は何ですか?」

また考えるような仕草をする。家政婦なら直ぐに答えられそうなのに。

「お菓子…そう、お菓子全般が得意です。」

お菓子全般って変わってるな。普通は和食とか洋食じゃないのか?

「お子さんがいるお宅ですか?」

「オコサンとはどのような意味ですか?」

急に無表情になり瞬きもせずに俺を見据える。

「知らないの?」

「申し訳ありません。データベースにアクセスしてみます。暫くお待ちください。」

意味不明な言葉を告げるとアイスさんは沈黙した。

「あ、あの…」

戸惑っているといきなり
『亜樹、緊急事態です。ソウが園内に入れないと騒いでいます。』とコウの焦り声が脳内に響いた。

『私としたことがこちらばかりに意識を集中してしまい周辺の警戒を怠ってしまいました。急いで此処から立ち去りますよ。』

『ち、ちよっ、入れないってどういう…』

『一刻を争います。直ちにこの場から…』

『アイスさんを置いては行けないよ。』

『その者は人間ではありません。生命エネルギーが感知できません。確認するまで時間が掛かりましたが。これは罠です。類の振りをして我らを誘き出したのです。彩王に思念を送りましたがあちらも何かあったらしく私の声が届きません。兎に角、私の指示に従ってください。』

頭が混乱して全く状況が掴めない。何を言っているのかも解らない。でも危険が迫っていることだけは解った。だけど彼女が人間じゃなくても騙されたとしても置いては行けない。だって彼女は俺の…

「っ!?」

突如、恭弥が俺の目前に出現した。するとコウも姿を現し俺を庇うように前に出た。

「貴様、何者だ!?」

何者って恭弥じゃないのか?

「僕は響恭弥。宇佐木亜樹、君を迎えに来たよ。」

薄ら笑いを浮かべながら両手を伸ばした。刹那、恭弥の背中から黒い翼が発現しそれと同時に寒気立つくらい禍々しく、おぞましいオーラを放った。

「なっ、何で…」

恭弥が…

震える指でコウの腕を掴んだ。1人で立っていられないくらい気持ち悪い。今すぐ逃げ出したいくらい怖い。嫌悪と恐怖でどうにかなりそう。

「亜樹、心配しないでください。私が必ず守ります。」

安心させるように俺の頭を撫でてくれた。

「どう?美しいだろ?これは闇さまが僕にくれたんだ。」

闇さまって…まさか…

「背中の焼印を嫌っていたお前が美しいなどと…彩王がこの場に居たら嘆き悲しんだだろう。」

「そんなはずないよ。彩龍は神々しいと言ってくれたんだから。」

翼を前後に動かし宙に舞うと俺の頭上で止まった。

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