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色彩繚乱

「う〜っ、さむっ。」

温暖化のせいで冬にしては気温高めでも風は冷たく頬に突き刺さる。空腹感はないのに感覚はあるんだよなぁ…ってないと困るけど。寒さを紛らわす為に足早で公園に向かうと次第に身体がポカポカしてきて曇の間から太陽が顔を出し地面を照らした。

「類、来てるかなぁ。」

園内に入り辺りを見回したけど類の姿はなく子供や親子連れが遊具で楽しげに遊んでいた。

俺も乗ってみようかな。

目の前のブランコに足を乗せ立ち漕ぎした。

「うーん…意外と上手くいかないもんだな。」

子供の頃は難なく漕げたのに。

『私が後ろから押してあげましょうか?』

不意にコウが話し掛けてきた。流石にそれは恥ずかしすぎるだろ。

『大丈夫。コツさえ掴めれば…』

全身を使って漕ぐと弾みがつき風を切る感触は気持ち良かった。

「こんにちは。」

突然、背後から声を掛けられ驚いた拍子に足を滑らせ落下してしまった。

「いってぇ…」

尻をさする俺に「大丈夫ですか?」と手を差し出した女性はとても綺麗だった。長い黒髪と透き通るような白い肌、長い睫に縁取られた黒い瞳。ぷっくりした唇は艶やかで口角のほくろは色っぽく白いトレンチコートが上品でお嬢様風だった。

あれ?この人、何処かで見たような…何処だっけ。

思い出せそうで凝視していたらクスッと笑った。

「私の顔に何かついてますか?」

俺のバカ!初対面でガン見とか失礼だろ!

「す、すいません。」

急いで立ち上がると女性は「私はアイスと申します。」と丁寧にお辞儀をするから俺も「宇佐木亜樹です。」とお辞儀をした。

「宇佐木さんはブランコ、お好きなんですか?とても楽しそうだったので、つい声を掛けてしまいました。」

年甲斐もなく漕いでいたからそう思ったんだろう。乗らなきゃ良かった。

「す、好きとかそういうんじゃなくて…」

赤くなった顔を背け小声で告げた。

「友達と待ち合わせてしてて時間潰しに乗っただけです。」

「奇遇ですね。私も人と待ち合わせしてるんです。良かったらベンチに座ってお話しませんか?」

誘われると思ってなかったからアイスさんに目線を戻した。

「無理にとは言いませんが私は宇佐木さんとお話してみたいのです。どうでしょう?」

遠慮がちに俺を見詰め微笑む。

何だろう…胸が切なくなってきた。どうしてこんな気持ちになるんだ?

『亜樹…この面差し、見覚えはありませんか?』

え!?

『私は良く存じています。これは偶然かはたまた運命か…亜樹はこの者と関わる必要があります。』

コウの口振りから察すると俺の記憶に関係しているみたいだ。

『そして自らの手で閉じた扉を開いてください。真実は其処にあります。』

自力で思い出せってことか。

「俺もアイスさんと話したいと思ってました。」

もしかしたら話しているうちに思い出すかもしれない。

「ありがとうございます。」

嬉しそうに笑うアイスさんに俺も笑みを返しベンチに向かった。

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あきゅろす。
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