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色彩繚乱

翌日、土曜日。
昼過ぎに研究所を訪れると由仁がアイスとオセロをしていた。

「もぅ一回。」

『ユニさま。これで10回目です。』

「…勝つまでやる。」

おい、おい。アイス相手に何、ムキになってんだ?

2人に近寄るとアイスに声を掛けた。

「アイス、替われ。俺が相手をする。」

『畏まりました。では私は所内の点検に行って参ります。』

「待て、アイス。翔、余計な真似するな。俺は勝つまでやると言ったらやるんだ。」

やれやれ…コイツ、言い出したら聞かないからな。

俺はアイスに目配せした。それを察したアイスは部屋から出て行った。

「あっ…」

席を立とうとする由仁の肩を押して座らせた。

「なぁ、由仁。アイスは電子頭脳搭載のアンドロイドだ。パソコンが歩いてるようなもんだ。お前の脳味噌で機械に勝てるわけないだろ?」

白夜さんと双子でも由仁は凡人だ。珀皇家の因習で双子は不吉だと分家に養子に出された。このことはごく一部しか知らない。だが由仁にとって幸運だったと思う。何故なら白夜さんと比較されずに済んだからだ。

「やってみないと解らない。」

だから、お前には無理なんだって。

「じゃ観点を変えて…そうだな。味噌汁で例えるならアイスは存在感溢れる豆腐でお前は汁の上を漂う細切れの小ネギだ。豆腐に勝るものはない。」

「味噌汁に豆腐は必要でネギは不必要ということか…豆腐より劣ってるネギ…俺は不要…不要?劣る?」

由仁の眉間に皺が刻まれ顔付きが険しくなった。言葉を選んだつもりが例えが悪かった。

「オラっ!!誰がネギだ!!俺はプカプカ浮いてねぇ!ざけんな!!」

テーブルをひっくり返すと俺に掴み掛かってきた。

「ま、待て、由仁、落ち着け!」

「っせぇ!!ぶん殴ってやる!!面出せや!オラっ!!」

殴られるのは御免だが殴り合いすると白夜さん、俺と口聞かなくなるからな。以前、由仁と喧嘩して一週間、シカトされた。二度としませんと謝り倒し機嫌をとって許してもらえたが、あれは堪えた。

「はぁ…仕様がない。」

由仁の顎を掴んでキスをしようとしたら突然、フランが顔を出した。

「あれれーっ。スイッチ先輩のスイッチが入ってる。」

「誰がスイッチだ!!」

俺から手を離すとフランに食ってかかった。

「腐れヤローが横から口を出すんじゃねーっ!!」

「私は腐れじゃありませんよ?フランです。フラン。」

へらっと笑うフランを由仁は怒鳴りつけた。

「うっせぇ!!腐乱だか腐男だか知らねぇが腐れは黙ってろ!!」

「腐れ…腐乱…腐男…よくもまぁ、腐を連発してくれますねぇ。」

今度はフランの顔付きが険しくなった。あぁ…最悪だ。

「フラン、由仁を傷つけるな。白夜さんにどやされるぞ。」

「あっ、そうでしたーっ。本当、面倒臭い人。」

「臭い!?俺が臭いだと?オラ、腐れ!ぶっ殺すぞ!」

「…先輩、コイツ、天国に送って良い?」

気持ちは解る。流石に腐を4回も言われたらキレるよな。

「ダメだ。何とかしろ。」

フランは渋々、ポケットからベルを取り出した。

「…УОЧИΙαγκηАцβξρ…」

呪文と不思議な音色のベルが室内に響き渡った。

「うっ!?」

由仁の身体が痙攣し始めた。

「あっ…何だ…これ…」

「おい、フラン、お前、何をした?」

「激昂を情欲に変えてみました。」

「は?」

「盛のついた猫のように発情中の犬のように浅ましく淫靡に相手を求め泣いて縋って醜態をさらせば良い。」

嘲笑うフランに俺はこめかみを押さえた。傷付けるなとは言ったが性欲魔神にしてどうする。

「あ、あぁっ…身体が熱い…はぁぅ…」

怒りが強かった分、欲が全身に回り解放したくて堪らないという表情をして身悶える。こうなったら俺がやるしかない。

「フラン、この状態は何時まで続くんだ?」

「先輩が面倒みるんですか?」

「お前がみてくれるのか?」

「まっさかぁ〜。私はそういう趣味ありませんので先輩にお任せします。」

「俺だって好きでヤるんじゃねぇよ。クソが。で、持続時間は?」

「ん〜っと気絶するまでかなぁ〜。」

曖昧な答えに舌打ちして由仁を背中に背負い部屋を後にした。

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