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色彩繚乱

俺の父親はロボット工学研究所の所長で蛙の子は蛙という諺どおり俺もその道にのめり込み二足歩行ロボットやボビー用ロボットを作ってはスタッフの意見を参考に改良する日々を送ってた。

ある日、ロボット工学第一人者の珀皇博士が父を訪ねて研究所にやって来た。端正な顔立ちとスマートの体躯。物腰柔らかく子供の俺にも威張ることなく接してくれた。

「父さんは博士をラボに案内するからお前は此処で待ってなさい。」

「はい。」

父さん達が出て行くと暫くして小型の猫型ロボットが部屋に入って来て俺の足元にすり寄った。

「うわっ…すっげぇ…。」

精巧な作りとリアルな動作は子供の俺でも解るくらい優れていた。

「こんなの初めて見た。珀皇博士が作ったのか?」

「違うよ。それ、僕が作ったんだ。名前はチョコたん。可愛いでしょ?」

突然、俺に話し掛けてきた少年は俺と同じくらいの歳で灰色の瞳を細めた。

「ウソ吐くな。作れるわけないだろ?」

「ウソじゃないよ。僕の父さんに聞いてよ。」

「父さんって誰だよ?」

「珀皇夜白。さっき出て行ったでしょ?」

コイツが珀皇博士の息子、珀皇白夜か。以前、父から聞いたことがあった。珀皇博士の息子は驚異的な頭脳とセンスの持ち主でいずれロボット工学に急速な発展と進化をもたらすだろう。10年、いや100年に一度の逸材だと。それが俺と同じ年頃の子供だったなんて…

「僕は珀皇白夜。宜しくね。」

珀皇博士に面差しの似た笑顔で握手を求めた。瞬間、俺の胸の中に嫉妬の炎が灯りダッシュで部屋を出た。俺だって、それなりに知識も技術もセンスもあるしロボコンで高校生に勝ったことだってあるんだ。なのに俺のロボットは…

「くそっ!!」

製作中のロボットを握り締めた。俺にあんな凄いロボットは作れない。上には上がいる。それも遥か上空。この先、どんなに努力しても追いつくことさえ出来ないだろう。

「悔しい…」

だけど相手の才能を妬む自分が情けなくて差し出された手を握れなかった自分の心の狭さを嫌悪をした。

「…醜いな…俺は…」

「翔チャン。」

えっ!?

不意に名前を呼ばれ振り向くと珀皇が居た。

「な、なんで…」

俺の名前を知ってるんだ?なんで追い掛けて来たんだ?

驚きに目を見開くと「マシュマロ。食べる?」と袋を差し出した。

「お、怒ってないのか?」

「怒ってないよ。」

笑ってマシュマロを1つ俺の手の平に乗せた。甘い匂いとふわっとした感触に食欲をそそられマシュマロを口に含んだら口の中でとろけた。

「美味しいでしょ?」

綺麗な顔を綻ばせるから、思わず頷いた。

「ねぇ、翔チャン、僕の友達になってよ?」

意外な言葉は俺を動揺させた。仲良くするつもりなんかなかった。だから握手を拒否した。

「今年のロボコン、惜しかったね。僕、帰国してきたばかりだけど来年一緒に優勝を狙おう。僕と君が手を組んだら素敵なロボットが作れると思うよ。」

知ってたのか。俺が準優勝だったことを。握手を拒否した理由も。それでも友達になろうと言うのか。

「は、はは…」

ふざけやがって…俺を馬鹿にして…

「翔チャン?」

そんなこと言えないようにしてやる。

「俺と手を組む?良いのかよ?お前の技術を盗むかもしれないぜ。」

冷ややかな眼差しを投げつけたら、にっこり笑った。

「翔チャンはそんなことしないよ。翔チャンの作るロボットは真心がこもってて、ロボットが好きで堪らないって気持ちで溢れてるから、それを穢す真似はしないよ。」

彼の言葉は俺の邪心を粉々に砕いた。器が違いすぎる。俺がコイツに勝てるモノなんて何もないだろう。

「買い被りすぎ…いえ、光栄です。白夜さん。」

「タメ口で良いよ。僕は翔チャンと同じ歳だから。」

同じ歳でも格上の人間に敬語を使うのが俺の流儀だ。

「自分の立場はわきまえていますから。宜しくお願いします。」

今度は自分から握手を求めた。すると白夜さんは俺の手を握り破顔一笑した。

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あきゅろす。
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