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色彩繚乱

「ねぇ、ボス。ボスは勿論、黒曜石側につくんですよね?」

当たり前だ。白夜さんが宇佐木を敵に回すわけがない。

「僕はそのつもりだよ。」

ほら、みろ。だが、そうなれば奴らは白夜さんを殺しに来るだろう。闇龍石にとって白龍石は脅威でしかないからだ。

「白夜さん、記憶が戻ったのは何時ですか?宇佐木と出会った時ですか?それとも闇龍石が現れた時ですか?」

この期に及んで疑うつもりはないが1から詳しく聞きたかった。俺の知らない事柄がないように。

「宇佐木くんに会って心の変化はあったけれど闇が接触してきてから断片的に脳裏に映像が映し出されて幻術の類いだと思いフランくんに相談したところ、一族秘伝の秘薬が効くって言われて昨日、飲んだんだ。」

の、飲んだだと!?

「んな怪しい物を口にして大丈夫なんですか!?」

慌てる俺に白夜さんは笑って頷いた。

ほっ…良かった。

「ちょーっと先輩、うちの秘薬は毒薬じゃないですよ。失礼極まりないです。ボスの為に無断で拝借したのにムカつきます。」

顔を顰めるフランの頭を白夜さんは優しく撫でた。

「感謝してるよ。秘薬のお陰で全てを思い出せた。ありがとう。」

フランなんかに礼を述べたら、いい気になって得意顔でふんぞり返って…

「フランくん、どうかした?」

浮かない表情のフランに白夜さんも可笑しいと気付いたのか目を見張った。するとフランは表情を笑みに変えた。

「あ、いえ、何でもありませんよ。ボスは私に知識を与えてくれましたので恩を返したまでです。」

コイツ…何か隠してるのか?

「僕は大したことしてないよ。応用し開発したのは君の実力だよ。」

「ご謙遜を。ま、私が優秀なのは認めますがアカデミーでは魔術オンリーで科学は学べませんから。」

フランは月葦に入学後、僅か半年で中退した。祖父が他界し母国に帰らなければならなくなったからだ。嘘か真か定かではないが。

「僕のせいでアカデミーを休学させてしまったね。」

「今回は了解を得てますので問題はありません。ところでどうします?此方から仕掛けますか?」

「出来れば争いは避けたいけどそうはいかないだろうね。だから2人に協力して欲しい。」


協力…か。白夜さんの要望に応じたいが俺はコイツを信用出来ない。

「俺、1人じゃダメですか?」 
胡散臭い奴と危険な橋は渡れない。

「うん。フランくんが居ないと宇佐木くんと龍王の記憶を引き出せないんだ。」

「あいつらも記憶を無くしてるんですか?」

「記憶があれば僕を迎えに来るだろう?」

「…確かに。」

「あまりにも辛く悲しい記憶だから奥底に沈めているんだ。気が狂いそうなくらい陰惨な光景と憎悪…僕は正気に戻るまで半日掛かったよ。」

「一体、何があったんですか?」

尋ねると白夜さんは言いたくないのか唇を結んで小刻みに震えた。余程、恐ろしい記憶なんだろう。無理に聞き出すのは酷だな。気にはなるが。

「…すいません。無神経でした。彼らの記憶は白夜さんにとって必要なんですか?」

「…うん。龍力の源は黒曜石、即ち宇佐木くん。龍石を束ねるのは龍王。2人の記憶が戻らないと2人が僕を認識してくれないと僕の半身、由仁を浄化出来ない。このままじゃ由仁が…僕の半身が闇に取り込まれてしまう。」

「ち、ちよっと待ってください。由仁が半身?」

聞いてないぞ!


「言ってなかったね。僕は闇を完全に浄化出来なくて闇龍石を生み出してしまい僕自身も闇に穢された。僕の中に残った闇は落下の際、分離して2つの肉体に入った。それが僕と由仁だよ。」

「そ、そんな…白夜さんのみならず由仁も人間じゃなかったのか。」

「人間じゃない…か。そうだね。僕は人間じゃない。気持ち悪いかい?」

俺を見詰める灰色の瞳が哀しげで胸が痛んだ。軽率な言葉で傷付けてしまった。白夜さんは白夜さんなのに…

「いいえ、全然、全く気持ち悪くないです!俺は生涯、白夜さんを尊敬し続けます!」

「あはっ!先輩、必死すぎ〜。」

「うるせぇ!!茶化すな!クソ腐乱!!」

睨み付けるとフランは肩を竦めた。ったく緊張感のねぇ奴だ。

「翔チャン、ありがとう。」

白夜さんは俺に笑みを向けてくれた。俺の言葉は気休めでしかないだろう。でもこれは本心だ。彼が龍石であろうが人間でなかろうが関係ない。初めて彼に会った時はこんなふうに思わなかった。

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