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色彩繚乱

『鳳さま、崩れた壁とシャッターを修理してきますのでご用があれば呼んでください。』

アイスはミニアイス三体を起動させると引き連れて行った。1人残された俺は疎外感に溜め息を吐いた。俺を差し置いて白夜さんと…

「くそっ…」

白夜さんは奴を気に入ってるが俺は虫が好かない。飄々としてて人を小馬鹿にした言動、態度、何もかもが癪に障る。たがヤツは前触れもなく現れた。二度と顔を会わせることはないと思っていただけに忌々しく腹癒せにキーを強く叩きデータを入力、最後にエンターを押したらエラーが出てしまった。

「はぁ…ダメだ。冷静にならないと。」

気持ちを切り替え画面に意識を集中した。

「此処は書き換えて、こっちは此処に保存して…後は…」

漏れがないよう注意しつつバックアップとプログラムチェックを終えた。

「ふぅ…完了。」

「翔チャン、お疲れさま。」

不意に声を掛けられ振り向くと白夜さんが居た。気配を全く感じなかったのは俺が集中していたからか?

「話は終わったんですか?」

「うん。まぁ…ね。」

歯切れの悪い返事。どうしたんだろう?一体、何を話してたんだ?

「心配しなくても話すよ。」

「えっ?」

「気になって仕方ないって顔してるから。」

苦笑する白夜さんに心の内を見透かされ赤面した。俺、そんな顔してたのか?カッコわるっ。

「先輩の赤面顔、キモっ〜!」

横からけたけた笑い声がが聞こえ思わず立ち上がった。

「お、おまっ、いつの間に?」

「イヤだなぁ。忘れたんですか?私は神出鬼没の魔術士。ファントム=フランですよ?」

翠眼を細め口角を上げる。ああ。すっかり忘れてたぜ。コイツは魔術士ベル一族の異端児だった。

「幽霊腐乱か。やっぱ、お前、死んだほうが良いぜ?」

侮蔑の眼差しで見下ろすとフランは冷笑した。

「ふふ…言ってくれますねぇ。私にかなうとでも思ってるんですかぁ?」

「はっ、魔術なんざ科学の力でねじ伏せてやる。」

要は呪文を唱えさせなければ良い。暇を与えず速戦即決。レーザーガンで急所を狙い一発で仕留める。

「射撃に自信があるからって自惚れないでくださいよ。私、魔術と科学を融合させた武器を作ったんです。」

「っ!?」

「呪文を唱えなくても発動出来る優れものです。試してみます?」

コイツ…弱点を克服する為に白夜さんの力を借りたのか!?


「ストップ。其処までだよ。」

白夜さんが俺達の間に立ちはだかった。

「仲違いするのは止めて僕が今から話すこと良く聞いて。フランくんも。言い忘れたことがあるから。」

初めて見る白夜さんの固い面持ちに只事ではないと感じ矛を収めた。

「解りました。」

「了解ーっ。ボス。」

素直に椅子に座るフランを睨みながら俺も腰を下ろした。

「…じゃあ、話すね。」

白夜さんはゆっくりと喋り出した。それから約1時間、黙って聴いていたが頭は混乱状態。それくらい常軌を逸していたからだ。

「翔チャン、口、開いてるよ?」

「す、すいません。あまりに突飛すぎて…」

フランの時も驚愕したが
これは比ではない。

「汚いなぁ。オタッキー先輩、よだれ垂れてますよーっ。」

はっ!?お、俺としたことが…

「僕も驚いてるんだよね。この研究所のセキュリティーは完璧だから目の前に現れた時は幻覚だと思ったよ。この時、記憶と龍力が戻っていたら浄化出来たんだけど。」

どこか遠くを見詰めて呟く白夜さんは儚げで胸騒ぎを覚えた。

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