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エビチュ

翌日。

校門を避け裏門からに入り欠伸をしながら教室に向かっていると後ろから肩を叩かれた。

「バカでも風邪引く来間くん、おはよん。具合はどう?」

にかっと笑うダチの頭にチョップでお返し。

「一言余計だっつーの。熱は下がったから大丈夫。」

「そっか。あんま無理すんなよな。ノートは取ってるから後で見せてやるよ。」

「サンキュー。助かる。」

こんなふうに朝から黒虎以外と喋るのは久しぶり。喧嘩する前、黒虎は毎朝、俺を校門の前で待ってた。女生徒達にちやほやされながら。それに腹を立てると次の日からは耳をイヤホンで塞いで話し掛けられてもシカトしてた。あれは嬉しかった。そして2人で教室に行った後はそのままずっと一緒。体育も移動教室も昼休みも。バイバイするのは交差点。黒虎が左で俺が右。家に帰り着いたら帰ったよメール。俺の生活の一部になってた黒虎。

「そういえば、ここんとこ黒虎とツルんでねぇのな。喧嘩したのか?」

「うん、まぁ。ちょっと。」

今日こそは黒虎と話そうと思って家を出たけど校門で待っている黒虎を目の当たりにしたら二の足を踏んでしまい裏門から入ってしまった。一昨日も今日も避けてばかりの自分に嫌気がさす。

「俺としちゃあ、来間と気兼ねなく話せるから良いんだけど。」

黒虎は俺が他の友達と話すと不機嫌な顔をする。女の子なら解るけど男にまでヤキモチ妬くなんて…あれ?

もしかして男にもヤキモチ妬かせたかったのか?

「なぁ、俺と話せて嬉しい?」

「あ?ああ。お前、天然だし顔も可愛いし女子は勿論、ヤローにも人気あるんだぜ。」

全然、気が付かなかった。俺って案外、モテるんだな。黒虎があんな真似したのは俺が男女共に好かれてるからで俺にヤキモチを妬かせたかったんだ。

「…そうか、そういうことか…あはは…」

「何だよ?急に笑い出して?」

「ううん、何でもない。」

俺のこと好きって言ったのは嘘じゃなかった。もう一度、黒虎を信じよう。昼休みになったら自分から話しかけよう。ケーキのお礼も兼ねて。

そう思っていたら2時間目の移動教室に向かう途中、背後から誰かに腕を引っ張られ口を塞がれた。

「う゛ぅ!?」

なっ、何!?

俺に気付かない友達の足音が遠ざかって行く。

…ま、待って!俺を置いて行かないで!

心の中で叫んでみても恐怖で声が出ない。身体も竦んで動けない。口にあてられた布から薬品の匂いが漂ってきて吸ったらヤバいと思い息を止めたけど次第に気が遠くなった。


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