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エビチュ

バイトが終わってもサイン会を思えば心は弾み家路に着くと早速、芝に話した。

「バイトの先輩が漫画家のアシしてて編集長から貰った招待券を俺にくれたんだ。」

封筒を見せると芝は顔色を曇らせた。

「星、当たれ〜って念を込めてハガキ書いてたもんね。映画に行けないなら僕、部活に出るよ。」

ああ、そうか。サイン会を優先すると思ったのか。

「心配すんな。なんと招待券は2枚あるんだ。朝、映画を見て午後からサイン会に行こうぜ。」

封筒の中から招待券を出した。すると芝の表情が明るくなった。

「安心した?」

首を傾け笑ったら芝はフレームを手の平で隠した。

「べ、別に…僕はファンじゃないし興味ないけど僕の分があるなら行ってやらないこともない…よ?」

隠れてない部分が赤く染まってるのに見えないと思ってるんだから…も〜、可愛い奴。

「一緒に行ってサイン貰おうな。」

満面の笑みを向けたら、ぷいっとそっぽを向いた。

「し、仕様がないから行ってあげる。」

ふっ…嬉しいくせに照れが邪魔して素直になれないんだよなぁ。でも、もし招待券が一枚しかなかったら芝が行かないって言ったら行くつもりはなかった。お互い日曜日に休みを取るのは難しいし初デートプランは念入りに練った。映画見て流行りのランチ食べた後、バスで水族館行って海浜公園で夕陽を眺めながら手を繋ぎキスをして家で熱い夜を過ごすんだ。ま、プランは変更になったけど次回に回せば良いし楽しみが増えるってもんだ。

そして待ちに待った日曜日。早起きして飯、作って出掛ける準備をした。この日の為に皆川先生の単行本を読み返しテンションを上げた。

「芝、行くぞ。」

ドアの前で声を掛けると扉が開いた。

「ごめん、時間、大丈夫?」

あっ…初めて見る服だ。

細いストライプの黒シャツと黒のベストはボタンを留めずに重ねインナーはVネック。黒色が白い肌を一層、際立たせ浮き出た鎖骨にシルバーチェーンが鈍い光を放ちオニキスを嵌め込んだソードは胸元を飾っている。

「その服…」

「ああ、これね、こっちに来る前に兄ちゃんが買ってくれたんだ。どうかな?変じゃない?」

どうって…こんな洒落た服を着こなしてお揃いのネックレスして似合ってないわけない。つか、無駄にエロい、ヤバい、にやける。


「い、良いんじゃね。」

口元を腕で隠すと芝は照れくさそうに微笑んだ。

「そ、そう…かな。星も良い感じ…ジャケットが大人っぽくて格好良いよ。」

初デートだから気合い入れて服、買ったけど格好良いとか言われたら我慢出来なく…いや、いや、映画が見れなくなっちまう。

「俺もネックレスしてるぜ。ほら…」

シャツのボタンを外して芝に見せると刷毛ではいた掃いたように頬をピンク色にした。それがまた可愛くて手が出そうになったけど拳を握ることで何とか理性を保った。恋人が可愛すぎるっつうのも色々、辛いなぁ。

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あきゅろす。
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