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エビチュ
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葵さんみたいに華奢で小柄なら間違ってナンパされたり痴漢に合ったりするかもしれないけど僕は何処から見ても男だし身長も高いし僕をどうこうする奴なんていないのに。

「僕、相手に彼氏の務めなんて言葉、良く思いつくね。呆れてるよ。まったく…」

「じゃ、芝さんは何ていうんですか?」

拳をマイク代わりにして僕の口元に向けニヤニヤした。僕に恥ずかしい言葉を言わせようとしてもその手には乗らないよ。飼い主に忠実なワンコぐらい…

「芝、唇に…切れてるのか?」

「えっ?」

切れた感覚はなかったけど唇を指で拭い指先を見たら口紅が付いていた。

「血じゃないよ。これは口紅で…っ!?」

星の顔付きがガラリと変わり見る見るうちに険しくなった。

「どういうことだ?」

な、なんか誤解してる!!

「ち、違っ…これは…」

視線を反らさず目で責め立てるから狼狽えてしまう。

「べ、別に、やましいことは…」

「ないなら話せるよな?」

話さなかったら言うまで問い詰めるのは百も承知してる。

「は、話す…話すから、とりあえず家に帰ろう?」

「解った。ソッコーで帰るぞ。」

僕の手を引いてスタスタと歩く星に僕は振り払いたい気持ちで一杯になった。人目があるし恥ずかしい。でも振り払ったら星の機嫌を更に悪化させるだろう。此処は素直に従うしか…いや、手なんか繋いで帰れない。

「星、離して。走るから。」

「あ、あぁ。」

手が離れた瞬間、家までダッシュした。

「はぁ、はぁ…」

何でこうなるんだよ!?最後だから、ゆっくり夜道を歩きたかったのに。今からでも遅くないかも…と思い横を見たら眉間に皺を寄せブツブツ何か呟きながら走ってた。

こわっ!!

ヤバい、ヤバい。早く誤解を解かなきゃ…一刻も早く…

前方にアパートが見えた途端、僕を追い越し猛ダッシュした。

や、やられた!!

負けず嫌いな僕は全力で追い掛けたけど追い付かず部屋の前で待つ星に手首を掴まれた。

「さぁ、話してもらいましょうか?」

口だけで笑う星はかなり…ううん…相当、怒ってる。

「わ、解ったってば。」

靴を脱いで居間に行きテーブルの前で腰を下ろすと星は胡座をかいた。手首を握ったまま

「いい加減、離してくんない?逃げないから。」

手首を上げると無言で離し僕を真っ向から見据えた。僕も星を見返した。後ろめたいことなんか一つもないからだ。


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あきゅろす。
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