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エビチュ

「…こ、これは漫画の中で現実じゃ有り得ません。ファンタジーです。フィクションです。」

認めようとせず目線を逸らし赤面した。やれやれ…消極的すぎるだろ。

「経験もないのにどうして言い切れるんだ?お前が尻込みしていたら星が可哀想だろ?」

「そ、それは…っ…」

反論出来ないのは少なからず、そう思っているからだ。

「百聞は一見に如かずだ。なんなら俺が練習台になってやる。攻めでも受けでも好きな方を選べ。」

可愛い後輩の為。一肌でも二肌でも脱ぐ覚悟はある。

「…少し…考えさせてください。」

困惑と動揺で顔面が強張り膝の上で握った拳は小刻みに揺れている。俺と違って決心がつかないんだろう。様子を見るしかないな。

「解った。それはひとまず置くとしてゲームを教えてくれ。」

「へっ?」

キョトンとする芝に此処に来る前の経緯を話した。

「解りました。星にゲームを借りて良いか聞いてみます。ちょっと待っててください。」

徐に立ち上がると部屋を出て行った。俺は本を紙袋に入れ携帯で時間を確認した。

「5時か。あと2時間したら真人にメールしよう。」

テーブルの上の空のグラスを眺めて待っていると芝が戻ってパソコンをテーブルに置いた。

「お待たせしました。教えられるほど僕もゲームに詳しくないんですが…」

「芝は星とゲームしないのか?確か、星のバイト先はゲームソフトやフィギュアを扱ってるって言ってなかったか?」

「ええ、星は担当なのでゲームをしますが僕はゲームよりバスケの方が好きなので、殆どしません。」

「そうだったのか。悪い。思い違いをしていた。」

「気にしないでください。とりあえず、プレイしてみましょう。」

パソコンを開きマウスで操作した。

「パソコンでゲームが出来るのか?」

「星に聞いたらゲーム機がなくてもパソコンならあるだろうって。なのでPC用のソフトです。」

「済まない。気を使わせてしまった。」

「いえ、桜先輩の手前もありますし。このソフトは脱出系ですがミステリーもアクションもあり巷では有名なゲームらしいです。」

芝がマウスで操作すると画面にタイトルが現れクマと少女が登場した。可愛いキャラクターは好感が持て幻想的なCGとメロディーに心が踊った。これなら出来そうだ。

「謎を解きながらアイテムをゲットしてレベルを上げながら迷宮を脱出するようです。やってみますか?」

「ああ。」

芝と入れ替わりマウスをクリックして迷宮攻略に挑戦した。しかしステージを進むにつれて謎も深まり敵も強くなった。

「あ、やられた。」

セーブポイントまで逆戻りか。こまめにセーブしないと…

「先輩、休憩しませんか?」

「そうだな。」

マウスを離しテーブルに目をやると卵焼き、肉じゃが、おにぎりが並べてあった。

「芝が作ったのか?」

「星の手料理です。僕は料理を作れません。」

苦笑いしてグラスに烏龍茶を入れた。

「先輩の分もありますが、まずは一杯、ですよね?」

居酒屋でのことを覚えていたのか。

「ありがとう。頂きます。」

烏龍茶を流し込んで料理に箸をつけた。

「…旨い。お前、良い彼氏を見つけたな。」

「男のくせに無駄に女子力が高いだけです。」

悪態で照れを隠すからほんの少し意地悪したくなった。

「そんなこと言ってると取られるぞ?今の世の中、料理上手な男はモテるらしいし星は男前だし女子が黙っていないだろう。」

俺の言葉に芝の顔色が変わった。マズい。これは真に受けてる顔だ。

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あきゅろす。
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