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エビチュ

「ま、まこ…くるしっ…」

「わわっ、ご、ごめん、ハル。俺…嬉しくて…っ…」

涙を浮かべるマコ先輩に桜先輩はふわっと顔面を緩めた。

「大袈裟な奴。」

「ハル…」

見つめ合う2人は僕を無視してラブラブモード。

なんか…もぅ、どうでも良くなった。帰ろうかなぁ。僕、お邪魔虫だし馬に蹴られたくないし…。

「芝、思い悩むな。案ずるより産むが易しだ。」

「っ!?」

「為せば成る、為さねば成らぬ何事も。」

ドヤ顔の桜先輩に返す言葉が見つからず頷いた…否、頷くしかなかった。桜先輩は僕の気持ちを理解しようと実践してくれた。驚愕の展開になってしまったけど、何も解決しなかったけどその気持ちは嬉しかった。

「お前ら、んな所に居たのか。探してたんだぜ。」

突然、竜宮先輩が僕らの前にやって来て顔を顰めた。するとマコ先輩が両手を合わせた。

「ごめん、ごめん。打ち合わせをしてたんだ。」

機転を利かせるマコ先輩。流石です。グッドです。

「打ち合わねぇ…。」

僕をチラッと見るから咄嗟に目線を反らした。竜宮先輩には見透かされている。僕の様子が可笑しいのは一目瞭然。当然だよね。

「ご心配、お掛けして、すいません。」

詫びると「お前には期待してんだから、しっかりしろよ?」と背中を強く叩かれた。

「いっ、は、はい…。」

背中の痛みより「期待」の方が痛かった。

「牡丹、芝を頼むぞ。桜、コンビネーションのバリエーションを増やしたい。来てくれ。」

「解った。」

桜先輩と竜宮先輩がその場を離れるとマコ先輩が僕の肩に手を置いて微笑んだ。

「芝くん、ありがとう。」

「えっ?」

礼を言うのは僕の方なのに意味が解らなくて首を傾げた。

「その…キッカケを作ってくれたから。俺、ハルに気持ちを打ち明ける勇気がなくて…ほら、俺達、友達だし。だから芝くんの気持ちも星くんの気持ちも凄く解るんだ。」

あぁ、そうか。告白したいけど友情を壊したくなくて二の足を踏んでたんだ。

「僕の相談はマコ先輩のお役に立てたんですね。良かったです。桜先輩に星と付き合ってみろって言われた時は驚きましたが…って桜先輩がマコ先輩を好きなのも驚きでした。」

実際はパニック状態で心の声が漏れてたら黒歴史に刻まれていただろう。

「あれには俺も驚いたよ。」

照れるマコ先輩は何だか可愛かった。星もこんな顔、するのかな?嬉し涙を流すのかな?

「芝くん、ハルの言ったこと考えてみたらどう?好きになったのが偶々、男で友達でっていうのは俺も同じだし。星くんを特別って思ってるならそれは恋の始まりだと思うよ。俺がそうだったから。」

マコ先輩の言葉は僕を混乱させた

恋の始まり?特別が?それは違う…と言い切れないのは所謂、経験者は語るからで…

「あと1つ。芝くん、今はバスケより星くんのことばかり考えてるだろ?」

「あっ…」

そうだ。僕にとってバスケは一番だった。でも最近は…今も…

「解っただろ?何が一番で大切か。」

言われて初めて気が付いた。僕の頭中を占めているのは星だ。バスケを疎かにするくらい。

「僕は…星が好きなんでしょうか?」

「確かめてみれば?」

「確かめる?どうやって?」

「ん〜、とりあえず星くんを意識してみるとか…それでドキドキしたり、キュンっとしたら好きってことになるんじゃないかな?ごめん、うまく言えないや。」

「…意識…ですか。」

漠然としててイメージできない。

「あ、そうだ!友達に借りた薄い本があるから今度、貸していいか聞いてみるよ。」

マニュアル本か何かかな?

「僕、恋愛経験がないので助かります。」

「俺もないよ。バスケ一筋で付き合ったことないし好きになったのはハルだけ。」

僕と一緒なんだ。でも僕は星が好きかまだ確信が持てない。

「悩むことは悪いことじゃないけど悩みすぎるのは良くないから1人で抱え込まないように。ね?」

僕の好きな優しい笑みを向けてくれるマコ先輩に「解りました。」と僕も笑みを返した。

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あきゅろす。
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