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エビチュ

僕の態度が癪に障ったのか甘木さんは眉間に皺を寄せた。

「俺、其処まで暇じゃないんだけど。」

それはこっちのセリフだ。と言いたいところをぐっと堪えた。無駄なエネルギーは使いたくないからだ。

「で、ご用件は?」

生意気な奴って面して睨んでもこの家の住人は僕だ。

「彼と夕飯、食べる約束してるから迎えに来た。」

そういえば男って言ってたっけ。この人だったのか。

「星は寝てます。なので無理だと思います。」

「じゃ、起こして来てくんない?電話しても出ないんだ。」

電話に出ないなら熟睡してるって何故、解らない?

「お断りします。」

「じゃ、俺が起こしてくる。」

強引に入ろうとするから身体でガードした。

「ち、ちよっ…止めてください。星は具合が悪いんです。」

「えっ!?具合って何処が悪いんだ?熱か?腹か?」

急に焦り出す彼に目を見張った。マジで心配してるのか?

「帰って来るなり倒れたんです。多分、暑さにやられたんでしょう。吐き気はなかったので水分を取らせました。ご心配なく。」

「そう…」

不安げだった表情が途端に安堵の表情に変わるから困惑してしまう。

「…解ったよ。無理をさせるわけにはいかないね。」

あっさり引き下られ唖然としていると甘木さんはポケットからケースを取り出し「何かあったら直ぐ連絡して。」と僕に名刺を渡し階段を下りて行った。

「さっきまでのしつこさは何だったんだ?わけ解んない。」

貰った名刺を見ると携番とアドレスが記入していた。

「甘木柚莉…か。あれで男って世の中、広いよな…っと星、大丈夫かな。」

星の様子を見に部屋に入ると星は携帯を机に置いてベッドから下りた。

「起きて平気なのか?」

問い掛けると何故か瞠目した。あれ?変なこと言ったかな?

「あ、あぁ…立ち眩みはしないし身体の熱も取れた。」

エアコンの温度を下げていたのが功を奏したらしい。

「良かった。何か食べる?」

「いや…約束があるから出掛ける。」

部屋から出て行こうとする星の腕を掴んだ。

「また倒れたらどうするんだよ?」

「ヤバくなったら帰る。」

やんわり手を離され言葉を失った。僕に止める権利はない。でも体調が万全じゃないのに約束を守る必要があるか?ましてや相手はあの人。悪い人じゃないのかもしれないけど良い人とは思えない。

「芝、俺に優しくするな。期待させるな。」

星の言葉に僕はハッとした。

「じゃ…行ってくる。」

部屋を出て行く星を茫然と見ていた。そうだ。優しくしたら星が辛くなるだけだなんだ。そんなことも解らないなんて…無神経な自分が嫌になる。

「はぁ…」

自己嫌悪に陥ったまま夜になり星の帰りを待っていたが深夜になっても星は帰って来なかった。何かあったんじゃ…と気掛かりで携帯を握りしめたまま、まんじりともせず夜が明けた。

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あきゅろす。
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