エビチュ 1芝視点 (芝視点) 「…僕はどうすれば良いんだろう。」 星の告白は僕に大打撃を与えたのは言うまでもなく。 「まさか星の好きな人が僕だったなんて…」 青天の霹靂もいいところだ。それにしても五年も僕に片思いって…どんな気持ちなんだろう。経験値も経験則もない僕が想像しても理解できるはずもない。だけど解ったことが1つある。それは友達じゃないっていう意味とそれに込められたキス…。 「キス…」 思い出して赤くなった。初めてのキスが友達で男って最悪だ。まぁ、掠めるようなキスだったから感触は覚えていないけど僕の黒歴史は更新されてしまった。 「星は本気で縁まで切るつもりなのかな。僕に気を使って…僕の為に…」 それで良いのか?と自分に問い掛けたが思考は瞬時にフリーズした。 「友達のままでいられたら…なんて自分勝手だよな。」 星を失いたくない気持ちはあっても星の気持ちは享受出来ない。 「友達としては好きだけど恋愛対象として好きじゃない。けど好きか嫌いかで分類すれば好きになる…」 うーん…僕は星が好き?うーん…違うな。likeであってloveじゃない…betterであってbestじゃない…ってことは結局のところどうなんだろう? 「頭が痛くなってきた。」 考えても考えても答えは見つからず五里霧中… 『ピンポーン♪』 「ん?誰だろう?」 来客を告げるチャイムに扉を開けた。 「どちら様…」 「こんにちわ。星くん、いるかな?」 笑みを浮かべ僕を見詰めるその人はとても綺麗だった。肩先まである栗色の髪、透き通るような白い肌。胸元の大きく開いたシャツから覗く鎖骨は色っぽい。欠点といえば声が低音ぐらいだ。 「えっと…星の知り合いですか?」 「今のところは…ね。」 口に手を当て意味ありげに笑う。なんか感じ悪いな。 「失礼ですが…お名前は?」 「あぁ、言ってなかったね。俺は甘木柚莉。」 俺って… 「お、男!?」 てっきり女性だと思っていたので思わず声に出してしまった。 「よく間違われるんだ。触ってみる?」 挑発するような目つきに赤面した。直接、触るなんて出来るわけないだろ! 「芝くんって純情なんだね。」 「な、何で、僕の名前を…」 「名前だけじゃないよ。星くんから聞いてる。昨夜、俺に会いに来たんだ。憔悴しきった顔をして…。ねぇ、芝くん、星くん、要らないなら俺にくれない?」 初対面でこんなこと言うなんてこの人の神経を疑う。 「星は物じゃないでしょ?アナタ、僕より年上ですよね?言葉を選んだ方がいいんじゃないですか?」 ムッとして言うと甘木さんは鼻で笑った。 「噂どおりで安心したよ。」 「どういう意味ですか?」 「芝くんは気が強くて負けず嫌い。プライド高く態度もデカい。崇拝する先輩を追い掛けて来たストーカー…とか。これはクロ…黒虎龍波から聞いたんだけどね。」 黒虎先輩とも知り合いなんだ。てか僕の印象、相当、悪いな。でも普通、思ってても公言しないものだ。この人もわざわざ僕に言うなんて2人共、性格、わるっ。 「…僕の悪口、言いに来たんじゃないですよね?」 ムカついたから軽蔑の眼差しで見下ろしてやった。僕より背が高かったら扉を閉めて追い返すところだ。 [次へ#] [戻る] |