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エビチュ

「話は明日にして今夜は泊まっていきなよ。」

「良いんですか?」

「勿論。シャワーで良かったら浴びる?」

「はい。走って来たから貸して頂けると助かります。」

「浴室はこの部屋の正面だよ。」

「解りました。」

部屋を出て目前のドアを開け服を脱いで浴室に入りシャワーを浴びた。

「着替え、此処に置いておくから。」

浴室の磨り硝子越しに「すいません。ありがとうございます。」と告げ膝を濡らさないよう身体と髪を洗った。

「ふぅ…さっぱりした。」

軽く水滴を払い浴室から出て用意されていたバスタオルで身体を拭き着替えを手に取った。

「新品のパンツとTシャツ、ハーフパンツだ。」

甘木さんの体型だと俺には小さいような…と思いつつ履いてみたら入った。少しキツめだけど。

「星くん、上がった?」

「あ、はい。」

「泊まる部屋はこっちだよ。」

浴室の斜め前の扉を開き「どうぞ。」と促され部屋に入るとヒンヤリしててテーブルにはペットボトルと絆創膏、畳の上には布団が敷いていた。

「何から何までお気遣いありがとうございます。俺に出来るのは精々、家事ぐらいですが、良かったら朝飯、作ります。」

「気を使わなくても良いよ。」

「俺、家事全般、こなせるし何もしない方が気を使うので気にしないでください。」

「へぇ…ルックスだけじゃなくスキルも高いんだね。俺はまったく出来ないからやってもらえると助かるよ。でも冷蔵庫に何もないんだ。明日、一緒に買い物に行こう。」

「了解です。」

「じゃ、おやすみ。」

微笑む甘木さんに俺も微笑み返しドアを閉めた。

「甘木さんは良い人だな。」

ペットボトルを開け乾いた喉を潤し布団に寝転んで目を閉じた。

「芝…今頃、どうしてるんだろう…」

考えることは芝のことばかり。飛び出し来たから携帯も財布も置いたまま。連絡のとりようもなく…って携帯、持っててもアイツは連絡してこないだろう。酷いこと言ったし腹を立ててふて寝してるかも。とりあえず、明日、戻って謝ろう。許してもらえるか解らないけど。


翌朝。

目覚めると同時に屋内を見て回った。一階は洋室とリビングキッチン、バストイレのみ。二階は甘木さんの自室があるんだろう。甘木さんが起きてきたら聞いて…

「ふぁ〜っ〜。」

丁度、二階から甘木さんが欠伸をしながら下りてきた。

「甘木さん、おはようございます。」

見上げて挨拶したら甘木さんは慌てて引き返した。

「えっ?」

呆気にとられていると少しして下りてきた。身なりを整えて。

「星くん、おはよう。早起きなんだね。吃驚しちゃったよ。」

わざわざ着替えてこなくても髪をとかさなくても良かったのに。だらしないところを他人に見せたくなかったとか?有り得るかも。お洒落な人だし身嗜みに気を使ってるし。

「学校が休みでも習慣で起きてしまうんです。二階は何部屋あるんですか?」

「仕事部屋と仮眠室と書斎の三部屋だよ。俺、漫画家なんだ。」

「漫画家!?」

働いてると思ってたが漫画家とは思わなかった。

「スゴいですね。どんな漫画、書いてるんですか?」

知ってる作品だったらサインもらおうと密かに期待していたら「マイナー雑誌だから知らないと思うよ。」と苦笑した。でも甘木さんがどんな漫画、書くか読みたいなぁ。

「後で見せてあげるよ。」

「良いんですか?」

「だって読みたいって顔してる。」

クスッと笑われ頭を掻いた。

「はは…バレました? 」
「二階をチラ見してたし俺のこと教えるって約束したし。」

覚えてたんだ。大人だから、その場限りの口約束で、うやむやにされると思ってた。甘木さんは思いの外、誠実な人なんだな。

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あきゅろす。
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