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エビチュ

「黙ってないで答えろよ。」

鼻先が付くぐらいの距離で真っ向から見詰められ心臓が口から出そうなった。

「星、僕は心配してるんだ。悩みがあるなら相談してよ。」

動悸が鼓動が芝に聞こえてしまいそうで思わずシャツを握った。

「あぁ!!?僕の眼鏡!!」

「えっ!?」

突然、床に押し倒され手首を掴まれた。

「話したのに眼鏡、壊すとか何の嫌がらせ?」

つい眼鏡を持っている方の手でシャツを握ってしまった。

「わ、わりぃ。弁償するわ。」

眼鏡を返すと顰めっ面で受け取った。

あぁ…最悪。芝の機嫌を取るどころじゃねぇな。

「当たり前だ。それより僕にだけ喋らせて自分はだんまり?それとも後ろめたいことしてんの?」

「なっ、ちがっ…」

「僕は星を友達だと思ってるから何でも打ち明けてきた。相談した。カッコ悪いとこも見せた。なのにお前は答えようとしない。」

一番、聞きたくない言葉に「友達なんかじゃねぇ!俺はお前が好きだ。」と喉元まで出掛かった。ダメだ。このままじゃ抑えられない。

「…どけ。」

起き上がろうとする俺の肩先を掴んだ。

「待て。話はまだ終わってない。」


「話すことなんかねぇっつーの。」

掴まれた手を振り払い立ち上がると芝に背を向けた。

「星とって僕は友達じゃないのか?」

悲しげな声音は胸を締め付けた。けどこれ以上、話を続ければ俺はお前に酷いことをしてしまいそうで怖いんだ。

「ダチ、ダチってうるせぇ奴。誰にだって秘密の1つや2つぐらいあるだろう?」

「僕にはない。」

キッパリ言い切られカチンときた。俺の気持ちも知らないで…

「そうだよな。お前は俺と違って清廉潔白で後ろ暗い事もねぇお綺麗な奴だ。俺を軽蔑してりゃあ良いさ。」

「それ、マジで言ってんの?」

「ああ、一々、干渉すんな。いい加減、ウンザリしてんだよ。」

こんなこと言うつもりじゃなかったのに…

「そぅ…僕…ウザかったのか…」

背後でポツリと呟く芝はきっと泣きそうな顔をしている。『違うんだ!お前が好きなんだ!』と抱き締めて告白したい。でも言ったら終わりだ。俺は部屋を飛び出し無我夢中で走った。

嫌われたくなくて傍にいられなくなるのが怖くて告白出来なかったのに自分から嫌われるようなこと言っちまった。俺はバカだ。大バカヤローだ。

「…っ…うっ…」

涙で視界が霞み足がもつれて派手に転けてしまった。

「いってぇ…っ…」

蹴躓くことはあっても無様に転ぶことはなかっただけに笑えた。

「はは…何、やってんだ。俺は…」

擦りむいた膝をさすりながら笑いは溜め息に変わった。

どうしよう…家に帰っても気まずいし…かといって他に行くとこないし。

膝を抱え悩んでいたら「星くん?」と名前を呼ばれ顔を上げると甘木さんが居た。

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