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エビチュ
1星視点


(星視点)



肌に染み込むような生暖かい空気とアスファルトから立ち上がる熱。湿度と気温が高ければ夜でも汗はダラダラ流れるもので出掛けにシャワーを浴びてきたのに、バイト先まで保たずTシャツで汗を拭き裏口から店に入った。

「ふぅ…生き返る。」

ヒンヤリしてて気持ち良いのと気持ち悪いのとで直ぐに着替えたかったが生憎、必要ないと思ってタオルしか持って来なかった。

「とりあえず、汗を拭くか。」

更衣室でTシャツを脱ぎリュックからタオルをだして身体を拭いて、エアコンの前でTシャツを乾かしていたらドアが開いた。

「星くん、何、してんの?」

バイト仲間で先輩の甘野さんが俺の姿を見てクスッと笑った。

変なとこ見られちまったな。

「汗でTシャツが湿ったんで乾かしてたんです。」

急いでTシャツを着てロッカーに掛けていたエプロンを身に付け鏡の前で身なりを整えながら貼ってあるシフト表を見た。

あれ、今日は近藤さんのはずなのに。

「甘野さん、シフト変更したんですか?」

「急用が出来て替わったんだ。」

困り顔で笑う甘野さんは俺より6つ上の大学生。人に頼まれると嫌と言えない性格で愛想も良いから接客業には向いている。うちはリサイクル&ディスカウントショップで開店は10時、閉店は深夜3時。俺のバイト時間は17時から20時なのだが、クロ先輩のバンド仲間の帆影さんが風邪を引き替わりに俺が2時まで出ることになった。

「甘野さんは人が良いから。」

俺の場合、クロ先輩に恩がある。彼とは牡丹桜の情報を探している時、SNSで知り合った。共通の趣味が音楽というのもあり比較的、早くフレンドになった。それで彼等の状況を知ることができ、尚且つ割安で立地条件の良いアパートや割高時給で競争率の高い此処を紹介してくれた。

「だって俺しかいないって泣きつかれたんだよ。」

そんなだから舐められるって解ってないんだろうな。天然のほほん系だし。

「俺、今週は19時から2時までなんで宜しくお願いします。」

「店長から聞いてる。帆影さん、大丈夫なの?」

帆影さんは俺達、コーナー担当じゃなく主にネットで買取価格調べたり売れない商品の値引きをしたりポップを作ったりの裏方担当。だから殆ど話したことないし親しくもない。それに人を寄せ付けない雰囲気、醸し出してんだよな。クロ先輩曰くギターリストは孤高の人が多いらしい。

「さぁ、どうなんでしょう。多分、大丈夫なんじゃないスっか。」

適当に答えて部屋を出てバックヤードの扉を開け一礼してから店内に入った。すると背後から声を掛けられ振り向くと相変わらずチャラい格好をしたクロ先輩と来間先輩が居た。

「よっ、煌星。遊びに来てやったぜ。」

「ライブ中止になったんですよね。お2人はデートですか?」

クロ先輩は来間先輩にベタ惚れなのは知っていたので冷やかしたつもりじゃなかったが来間先輩は真っ赤になった。

「そっ。ね、来間ちゃん。」

とろけそうなほどのデレ顔のクロ先輩と更に顔を赤くするに来間先輩。見てるこっちが恥ずかしくなる。

「俺、仕事中なんで失礼します。ゆっくりしてってください。」

「おぅ。頑張れよ。」

軽くお辞儀して担当しているコーナーに向かった。

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あきゅろす。
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